2017年11月16日

バランスのとれたSFを書く小川一水による短編集 『妙なる技の乙女たち』

学生時代、ケーブルテレビで放送されていた『スタートレック』を欠かさず観ていた。ある日、友人に勧めたところ、「子どもだましのSFはちょっと……」という反応だったので、その魅力を伝えるために熱弁をふるった。ところが実は、俺自身も初めてスタートレックを観るまでは、この友人と同じように考えていて、まったく興味を持っていなかったのだ。ある日たまたま観てみると、登場人物が魅力的で、毎回のテーマもしっかりしており、単なる宇宙冒険ドラマではないことに気づいてしまった。

SF小説も同じで、単なる空想科学小説を面白いとは思えない。あくまでも空想科学を舞台にして、人間を描きながらテーマを提示するようなものであって欲しいし、もちろん読みやすさも大切だ。

そして、舞台設定の上手さ、人物描写の巧みさ、読みやすさが三拍子そろっているのが小川一水。俺と同じ1975年生まれということもあって、密かに応援している作家でもある。

小川一水を初めて読んだのは『老ヴォールの惑星』という短編集だったが、その中の一つ『漂った男』には鳥肌がたった。SF食わず嫌いの人には、何はともあれこの短編だけでも良いから読んでみて欲しい。こんなんアリかよ、という面白さである。


さて本書であるが、全8話が収められている。舞台は今より少し未来で、宇宙エレベーターが完成した時代。それぞれタイトル通り若い女性が主人公だ。第一話『天上のデザイナー』がやや軽いタッチの話だったので、読み終えるかどうか悩んだ。というのも、俺のイチオシSF作家ではあるが、すべてを手放し大絶賛というわけではなく、過去に読んだラノベで途中リタイアしたこともあるからだ。

幸いにも第2話からは雰囲気が少し変わって、結果としては全部読んで「面白かった!」と言えるものであった。

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