2017年10月5日

全体的には治療者向けだが、自分自身、あるいは家族・友人が境界性人格障害という人も読む価値は充分にある! 『境界性人格障害のすべて』から (2)


BPDの人とのコミュニケーションの取り方が「SET」として紹介されている。これはセント・ルイスにある病院で開発された方法で、

支持(Support)
共感(Empathy)
真実(Truth)

の、それぞれの頭文字を取ったものである。

まず、支持について。
これは「相手を気遣っている」という個人的な気持ちを表明することである。例えば、
「あなたがどんな気持ちなのか、私はとても心配しています」
「君が苦しんでいるのを心配している。愛しているから力になりたい」
といった感じである。ここで大切なのは話し手自身の気持ちで、心から力になりたいと思っていることを伝えること。

次に、共感について。
これは、相手の混乱した気持ちを受け止める姿勢を表すことである。決して同情と混同してはいけない。なかなか難しいのだが、本書に従うと、共感の良い表現は、
「どんなにつらいことでしょう」
「君はこれまで苦しんできたんだから、もう耐えきれなくなったんだろう」
「これ以上、先へ進んでいく気力をなくしてしまったんだね」
であり、逆に悪いのは、
「かわいそうに……」
「どんなにつらいか、よく分かります」
といったもの。支持と違い、あくまでも強調されるのは相手の気持ちであり、こちらの感情ではない。共感は非常に分かりにくいが、「相手の憤りや悲しみや混乱した気持ちを言葉にしてあげる」といったところだろうか。決して、こちらの感情を言葉にすることではない。

最後に、真実について。
これは、現実と言っても良い。
「あなたに関わる最終的な責任は、あなた自身にしかとれない」
このことを明確に伝え、
「こちら側に、どれほど力になろうとする気持ちがあっても、最終的な責任は、あなた以外の誰にも肩がわりすることはできない」
ということを表明する。支持がこちら側の気持ちを、共感が相手の気持ちを、それぞれ主観的に述べるのに対して、真実では、今の問題を認識させ、解決に向けて何がなされるべきかを述べることが主体となる。ただし、非難・叱責というかたちになるのは避けなくてはならない。例えば、「だからこういうことになったんだ」や「自分のまいた種なんだから……」といった言いかたは良くない。

今回はここまで。

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