2017年9月12日

野球の実況、テレビとラジオの違い

野球実況のやりかたは、テレビとラジオで大きく違う。ある番組で徳光和夫が説明していて、非常に納得する内容だった。

ラジオではリスナー側に映像がないので、それを言葉で補ってやらなければいけない。
「カウント、ノーボール、ツーストライク、追い込んでいます。桑田、一塁ランナーを警戒して、第3球投げました! 打った! ショート正面! あっと、エラー! 拾ったボールを……、あ、もう投げません。ランナー1塁2塁となりました。打った清原ガッツポーズ!」
といった具合に、目の前の光景を逐一言葉にする。

この番組で、素人にテレビ実況をやらせてみたところ、上記のようなものになってしまった。「言われなくても見れば分かる」ことも、一つ一つ実況されると、観ているこちらはくどく感じてしまう。徳光は言う。

「テレビでは、わざわざ言葉で伝えなくても、観ている人は映像で充分に分かる。だから、なるべく無駄な言葉は省いて、それ以外の情報を届けるように心がけている」

これはなにも実況に限った話ではなく、「話し言葉」と「書き言葉」の関係でも同じことが言える。また、実は精神科の診療場面でも、いや診察以外のもっと多くの日常の場面でも同様のことがあるのではなかろうか。つまりどういうことかというと……、いや、敢えて書かないでおこう。

わざわざ言わなくても良いことは、言わないに限るのだから。


ところで、徳光はアナウンサーを目指していた当時、電車に乗ると車窓からの眺めをすべて小声で実況していたそうだ。
「電車が発車いたしました。ホームを出ますとまず右手に見えますのが……」
といった調子で、ひたすら「間を空けない練習」をしていたらしい。

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