2017年6月26日

名人・米長邦雄による人生の勝負指南 『人間における勝負の研究』


名人棋士・米長邦雄による勝負をテーマとしたエッセイ。エッセイにありがちな「何かの雑誌の連載をまとめた」というものではなく、おそらく書き下ろしで、だから一気に読んでも疲れなかった。短文をまとめたエッセイは、まとめて読むと疲れるものである。

読んでいて、ナルホドと思うことも多々あった。精神科医療にも通じると感じる部分もあった。

たとえばプロ棋士は、決して全部の手を読んでいるわけではなく、読まない手、つまり捨てる手の判断が迅速かつ適切なので、読むべき手に時間と集中力をかけられる、という話。あるいは、「カンは、努力・知識・体験のエキス」であるという話。こうしたことは、将棋でも精神科の診察室でも、それから日常生活でも同じことが言えるのではないだろうか。

米長棋士の語る「女性のありかた」については、きっと多々批難されそうではあったが、それもまぁご愛嬌というところ。著者の兄は三人とも東大卒業ということで、きっと地頭が良いのだろう。文章は読みやすく、感心させられるものだった。

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