2016年1月14日

暗いし長いのでお勧めはしないが、良い本だったとは思う 『1984年』


SF小説ではあるが、時代設定は1984年なので現代からすると30年以上前。ただし発表が1948年なので、著者のジョージ・オーウェルは36年後の未来を描いたということになる。

精神科や心理学関連の本を読んでいると、よくこの『1984年』が紹介されている。それくらいインパクトがあって、かつ示唆に富む小説であることは確かなのだが、全体を通じてとにかく暗いので、その点は覚悟が必要である。

本書に出てくる「ニュースピーク」という新言語とその考え方が面白い。

「“素晴らしい”とか“素敵”とか、そういう言葉は要らない。“良い”で代用できるものは全てシンプルに“良い”を用いる。程度を表したければ、“倍良”“超良”“倍超良”とすれば良い。“悪い”という単語は不要で、“不良”を用いて、それにまた“倍”とか“超”とかをつければ表現できる」(新訳版。旧訳ではどうなっているか知らない)

こうして言葉をどんどん削っていく仕事をする公的部署があるのだが、ふと現代の日本語のあり方に思いをはせると、これに似たようなことが着々と進んでいるように見える。

例えばテレビでもネットでも「~すぎる」という言葉が氾濫している。「キレイすぎる」「美味しすぎる」「楽しすぎる」など、表現の仕方としてはニュースピークの“倍超良”と同族である。

こんなことを考えるヒントになるから、本書は古典として今でも人気があるのだろう。暗いし長いのでお勧めはしない。100点満点の65点。かろうじて読み切れる良書といったところ。

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