2015年11月12日

『黄泉がえり』『エマノン・シリーズ』を書いた梶尾真治の想像力とユーモアが光る 『ゑゐり庵綺譚』


惑星ズヴゥフルⅤにあるソバ屋「ゑゐり庵」(エイリアン)の主人であるアピ・北川を主人公としたSF短編が16本と、わりとシリアスな内容の短編2本、それから『包茎牧場の決闘』というもの凄く卑猥なのに、読み終わってみるとなんだか壮大な話だったという短編からなる。

本の最初で、「これは、アイデア・ストーリーを作るという作業に、ひたすらのめり込んでいた時期の作品です」とあるとおり、いずれもキラリと光るアイデアを小説に紡いだという感じで、どれもこれもが面白かった。タイトルからは、もっとフザけた感じのドタバタSFかなと思っていたが、内容はシリアスなものも多かった(ただし登場人物や惑星や宇宙船の名前などはかなりユーモラス)。

SFというだけで毛嫌いする人がいるが、SFは舞台を近未来・未来に設定してあるだけで、中身は普通の小説同様に人間模様や心の機微を描いてあることが多いし、またそうでなければ読んでいて面白くない。本書もSFではあるが、通常の短編集と考えて読んでも充分に楽しめるし、SF初心者にはよくまとまった短編ばかりなので読みやすいはずだ。

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