2015年7月29日

邦題が購買層をミスリードしているが、中身は非常に良い! 『ポジティブな人だけがうまくいく 3:1の法則』


本書のメインテーマは、ポジティビティである。ポジティビティとネガティビティの比率が3:1以上、つまりポジティビティがネガティビティの3倍以上ないと人生が「繁栄」せず「沈滞」するというのがタイトルにもなっている「法則」である。

ポジティビティがちょっと減って、たとえば2:1ではダメなのか? ダメなのだ。では2.5:1ではどうか? やはりダメなのだ。とにかく3:1以上ないと良い循環に結びつかないことが多くの研究・統計で明らかになった。つまり「3:1の法則」である。

ただし、ネガティビティをゼロにする必要はない、というよりゼロにすることは不可能であるし、ネガティビティが絶対悪というわけでもない。むしろ人生に必要なネガティビティだってある。

こうした筆者の主張を踏まえてみると、この邦題『ポジティブな人だけがうまくいく』はトンデモなく購買層をミスリードしている。筆者は決してそのようなことは主張していない。

ポジティビティとネガティビティの比率を3:1にするためには、ポジティビティを増やすか、ネガティビティを減らすか(ゼロにできないことは筆者が繰り返し強調している)しないといけない。どうすればそうできるか、そうしたことに関して様々な実験と統計から得られたことを解説している。

本書の原題は『Positivity』と非常にシンプルである。邦題をつけた人間は筆者の意図をはき違えているか、売るための手段としてそうしたのか……。後者なのかなぁ。

2015年7月24日

医師は、手術や処方を間違うのと同じように、患者への言葉かけでも間違うことがある 『病を癒やす希望の力』


本書のタイトル『病を癒やす希望の力』は、希望を持つだけで病気が治ってしまうと思わせるようなものだが、これは著者の意図とはまったく違う。

確かに著者は患者が希望を持つことは大切だと述べている。また医師や看護師が患者に希望を持たせるための言動についても詳しく書いている。ただの楽天主義ではダメであり、また患者に病名を知らせなかったり経過や予後に関して嘘をついたりして「偽りの希望」を与えることにも異を唱えている。

ではどういう希望が良いのか、そのあたりの詳しいことを知りたい人には本書を読んでもらおう。不治・難治の病気を抱える人と関わることの多い医療者にはぜひ読んでみて欲しい一冊である。
医師は、手術や処方を間違うのと同じように、患者への言葉かけでも間違うことがある。
これは著者が自分自身の臨床経験と、自分が患者として体験したことから痛感したことである。この非常にシンプルな一文が、俺にはずしりと重かった。医療者として決して疎かにしてはいけないことだと思う。

本書の原題は『The Anatomy of Hope』。これを『病を癒やす希望の力』という邦題にした出版社は、本書の意図をはき違えているのか、それとも代替医療やヒーリング大好きな人を購買層に入れるために敢えてこういうタイトルにしたのか……? きっと後者なんだろうなぁ……。

これを本当に読むべきは、医療者である。

2015年7月23日

謝るなら、いつでもおいで


長崎県佐世保市で起きた小学生女児が同級生の女児を殺害した事件に関するルポタージュ。

被害者の父は毎日新聞・佐世保支局の局長だった。当時の佐世保支局には局長と記者2名(うち1名が著者である)、受付の女性の4人が勤務していた。建物は3階建てで、1階が駐車場、2階が事務所、3階が局長の社宅という造りで、著者は頻繁に局長宅に遊びに行き、被害女児とも食事したり喋ったりしたことがあったそうだ。

この事件の数年前に被害女児の母は乳癌のため他界しており、社宅には局長と被害女児、それから当時14歳の次男が一緒に住んでいた。本書の最後には、事件から歳月が経ち大学生になった次男へのインタビューもおさめられている。この内容が、ものすごく良い。感動するとか、胸を打たれるとか、そういうものではなく、ただ「良い」としか表現できない。俺なんかが飾った文章で評価してはいけない、そんな気持ちにさせられる。

毎日新聞は好きじゃないが、この本はものすごく良かった。著者が公平な視点を持った良い記者に育っていることを期待する。

ちなみに、著者と俺とは同じ年の生まれであった。

2015年7月22日

99%の人がしていない たった1%のリーダーのコツ


まず本書はタイトルが秀逸だ。なんだか読みたくなるようなタイトルである。

内容も多すぎず少なすぎず、読んでいて的はずれと感じることもなく、むしろ「うん、なるほど」と思うことも多く、そして適度な時間で読み終えた。Amazonの中身検索で文章の雰囲気や目次が分かるので参考にして欲しい。

値段は1500円。これはどうだろう……? 分量のわりにはちょっと割高かなとも思うが、著者に教えを請うのだと考えればこの値段が高すぎるということもなかろう。

2015年7月17日

読んで心がポッカポカ 『こころのチキンスープ』


ずいぶん前に話題になった本を、今さらながらに読んでみた。たくさんの小話を集めたもので、玉石混淆といった感じ。読んでものすごくガツーンとくるような自己啓発の本ではなく、じんわりと沁み入ってくるような、まさにチキンスープを飲んでお腹がポカポカなるような、そんな本だった。

2015年7月16日

さすがディーバー 『石の猿』


脊髄損傷して全身麻痺となった天才犯罪学者リンカーン・ライムを主人公としたミステリ・シリーズ。

相変わらずのドンデン返しはさすが。人物の描写もしっかりしており、そしてやはり社会問題をきちんと取り込み織り込みしている。今回は不法移民がテーマとなっている。

安定した面白さであった。

2015年7月14日

小粒ぞろいの短編集 『家族写真』


荻原浩の短編集で、ものすごく良いというわけでもないが、第一話『結婚しようよ』はグッときた。妻を亡くして娘と二人暮らしをする父親が主人公で、娘から婚約相手を紹介されるという話だ。思わず我が身と置き換えて(俺の妻は健康ばりばりだが)、ジーンと涙ぐんでしまった。

2015年7月13日

イジメられても家族の前で明るく振る舞うのは心配をかけたくないから?

7月10日の産経抄(『優しい心があれば』)より。
家族の前で気丈に振る舞ったのは、心配をかけたくなかったからだろう。
イジメを苦に自殺した少年についてこんなことが書いてあったが、ちょっと紋切り型で安易な発想ではないかな?

13歳には13歳なりの、家族に対するプライドがある。「僕イジメられてるんだ」なんて家族には死んでも言いたくない気持ちはよく分かる。それから、家庭にイジメの影を持ち込みたくない気持ちもある。家族に打ち明けた時点から、家庭の中でもイジメが話題にのぼるようになる。数少ない大切な安息の場なのに。

でも、きっとこれも違うよな。
彼にしか分からない。
分からなかった。

今になってあれこれ推測したところで、それが的外れでも的を射ていても、彼にとっては意味がない。意味がないことを、したり顔で分析して書いてみせる。

ライターも俺も五十歩百歩だな。

ただ、イジメについてはこう思う。

イジメはなくならないし、なくせない。その前提に立って、自殺という最悪の結果を避けるためにどうすれば良いか、イジメをより軽症で済ませるためにはどういう方法があるのか、そういうことを模索するほうが有益だろう。

<関連>
イジメの深刻化を防ぐために
いじめ問題を考える 『十字架』
「イジメは犯罪」「大人と同じに厳罰を」の限界

2015年7月10日

起業やマーケティングに興味がある人にはかなり役に立つはず 『史上最高のセミナー』


人々を“完全なる無関心”、つまり、あなたのことをまったく知らない状態から、今すぐ買いたいという気持ちにさせるには、あなたのメッセージが人の心に9回浸透しなければならないということだ。これは実にいい知らせだね。
だが悪い知らせもある。あなたが送るメッセージの3回につき2回は、人々は注意を払っていないということだ。
これはつまり、27回メッセージを送らないと、相手の購買行動にはつながらないということである。だから、レビンソンはこう言う。

成功したゲリラ(※ここではゲリラ・マーケティングを利用する人のこと)の第一の人格特性とは、明らかに“忍耐力だ”。

毎回、成功者にインタビューするアメリカのラジオ番組『マイク・リットマン・ショー』の中から、9人を選んで、その内容を文字起こした本。冒頭の言葉は、ジョン・コンラッド・レビンソンのインタビューを抜粋。

俺は開業を意識することはあっても、起業を考えることはない。ただ、こういう本も何かの時に役立ちそうだからと思って読んでみた。起業やマーケティングに興味がある人はかなり有益ではなかろうか。

2015年7月9日

味そのものより、歯ごたえを楽しむような本 『バースト! 人間行動を支配するパターン』


本書を料理に喩えるなら、味そのものよりも歯ごたえを楽しむ一品。もちろんマズいわけではない。それだと歯ごたえも楽しめない。味は充分に及第点で、さらに歯ごたえが良いのだ。

難点は値段が高いところ。中古でも送料入れれば1000円くらい。

2015年7月7日

さすらいエマノン


エマノンシリーズは毎回面白いと感じるのだが、今回はちょっといま一つだった。

2015年7月6日

出口のない海


横山秀夫、こういう本も書くんだなぁといった感じではあったが、ストーリー的にはいまひとつ盛り上がれなかった。ただ、特攻隊(本書の場合は人間魚雷『回天』での特攻)に乗る人の心理描写というのが凄かった。ああ、自分だったらこういう心理状態で正気を保てるだろうか……? そんな戦慄を感じながら読んだ。

2015年7月2日

得られるものは読む人次第。 『史上最高のセミナー』

現在ついている仕事を好きになる必要はない。その仕事を始めるきっかけとなったチャンスや機会を愛すればいい。というのは、スタートした場所は今から一年後、五年後、十年後に自分が行き着く場所であるとは限らないからだ。

毎回、成功者にインタビューするアメリカのラジオ番組『マイク・リットマン・ショー』の中から、9人を選んで、その内容を文字起こした本。冒頭の言葉は、ジム・ローンのインタビューを抜粋。

得られるものは読む人次第だろうが、起業やマーケティングに興味がある人は特にかなりおもしろく読めるのではなかろうか。

2015年7月1日

箱庭旅団‏


朱川湊人の短編集。可もなく不可もない。シリーズもののようだが、他も読みたいとは思えず、これ一冊で充分といった感じ。