2015年2月20日

復活の地


カバーはいかにも子ども向けという感じだが、中身はわりと硬派なSF小説であり、震災小説であり、政治・官僚小説であり、恋愛小説であり、人間小説である。

惑星レンカの首都を襲った大震災とその後の復興をテーマにした群像劇。登場人物は横文字名前だが、国の規模、政治体制、貨幣価値などはほぼ日本と同じで、身近に引き寄せて想像しやすい。阪神淡路大震災をかなり参考にしてあるようで、防災について考えさせられることも多かった。さらに東日本大震災を経験した今では、人それぞれに感じることが多い小説ではないかと思う。

序盤は、
「どうしてこんな未来の話なのに、こんな古臭い街やシステムや道具があるの?」
と戸惑ったり違和感があったりした。その理由は1巻の中盤を過ぎたあたりで明かされる。大したネタバレにもならないので書いておくと、物語の舞台となるのは、地球から宇宙のあちこちに人類が散らばった後に惑星間の戦争が起こり、高度な知識や技術の多くを独占していた地球が滅び、それらの知識や技術がかなり失われてしまってから数百年後である。

数年前まではSF小説というだけで毛嫌いしていたのだが、その食わず嫌いは完全に治った。SFは、あくまでも舞台が近未来、未来であったり、小道具が空想的なものであったりするだけで、描かれるのは人間である。というか、そういうSF小説やSF映画でなければ面白くない。

SF食わず嫌いという人はけっこう多い。そんな人に、ぜひとも読んでみて欲しい作品の一つに本書を含める。

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