2015年2月6日

破壊する創造者


(ある種のサルを宿主として安定している)ウイルスは、元々の宿主と生態学的地位が同じで、食べ物も同じ、というサルに対し、最も攻撃的になると思います。たとえ同じ地域で暮らしていても、食べ物や生態学的地位が違っていれば、ウイルスの攻撃性はさほどでもないでしょう。
これは、本書内のハーバード大学エイズ研究所所長 マックス・エセックス教授へのインタビューから引用したもの。

遺伝子やDNA、進化に関する高度な知識を要する部分もあったが、全体を通してみて刺激的な本だった。ただ、基礎だけでも良いので細胞生物学の知識がないと読みにくいかもしれない。

遺伝や進化については基礎知識しかないが、そのかわり高度な先入観もない分、本書で取りあげられているような「反論」を感じることもなく、へぇそうなんだ、と素直に読めた。

中でも冒頭の引用前後の話は面白かった。人間のインフルエンザは犬にうつらないし、犬の風邪(ケンネル・カフ)も人間には無害だ。ある生物Aと共存するウイルスは、その生物とエサなどの生存環境を奪い合う類似種の生物Bがやってきた時、そのBに対して感染症として猛威をふるう。ウイルスにとってAは繁殖の場であり、Aを守ることは自らの利益になる。また、もちろんAにとってはBがいないほうが良い。このような形で生物とウイルスの共生があるのではないか、というのが本書のテーマの中の一つである。

そういえば映画『宇宙戦争』では、地球に攻めてきた宇宙人が、地球の細菌かウイルスかにやられて逃げ帰るという結末だった。これはまさに上記のことを描いているわけだが、H・G・ウェルズが原作を書いたのは1898年。ダーウィンの『種の起源』が発行されたのが1859年、パスツールによる細菌の発見が1860年、コッホによって病原性微生物による感染症という考えが提唱されたのが1876年ということを考えると、ウェルズというSF小説家のすごさがよく分かる。

宇宙戦争

2 件のコメント:

  1. 今、まさに風邪かインフルに感染しているのでタイムリーだな…と思いながらブログ拝見してました。鳥インフルとか豚インフルとか、ああいたウイルスの変異が無い限りは感染しない…って事なんでしょうか?
    インコを飼っているので鳥→人があるなら、人→鳥もあるのかと心配してうちのインコ触らないようにしていましたが(笑)
    今、まさに読んでみたい一冊ですが、細胞生物学の知識が無いので読みにくいですか~・・・。

    返信削除
    返信
    1. >ゆうさん
      なんだかウイルスに弱い体質なのかもしれませんね……^_^;

      ところで、この本はちょっと堅かったですが、今日紹介している本はわりとライトな感じでしたよ。ウイルスに興味が出られたなら、そちらもお勧めです!
      http://psichiatra.blogspot.jp/2015/02/blog-post_84.html

      削除

コメントへの返信を一時中止しています。
一部エントリでコメント欄に素晴らしいご意見をいただいており、閲覧者の参考にもなると思われるため、コメント欄そのものは残しております。
また、いただいたコメントはすべて読んでおります。