2014年4月30日

フェルマーの最終定理

高校時代は文系をとっていたが、古文や歴史は大の苦手だった。国語の現代文と漢文、それから英語に関しては多少の自信はあったけれど、それよりは数学のほうが得意だったような気がする。

超難関校を除いた普通の大学受験に必要な高校数学は、ある一定のパターンを覚え込んで、それらをどう当てはめて使うかだけの単純なものがほとんどだ。要は、たくさんの技を覚えて、それをどう組み合わせるかで、あとは「ミスしない計算力」が問われる。

フェルマーの最終定理
九大時代、理学部数学科の友人が「高校の数学は、本当の数学ではない」と言っていた。そして、この本を読んで、確かに高校数学なんて数学ではないと思ってしまった。ただし、本書は基本的には数学そのものではなく、数学と格闘してきた人たちの物語であり、理系ではなく文系に属するものだった(一部難解ではあるが、そんなもの理解できなくても大丈夫)。

ちなみに、フェルマーの最終定理とは、
『3 以上の自然数nについて、(Xのn乗)+(Yのn乗)=(Zのn乗)となる0でない自然数(X、Y、Z)の組が存在しない』
というもの。

なかなか面白かったので、知的好奇心に飢えている人にはお勧めである。

2014年4月28日

「イライラする」 → 「はい、薬をどうぞ」 はやめよう

土曜日の夜、病棟から電話があり、うつ病で入院・治療している人について、
「イライラすると言っている」
と報告を受けた。そこで薬の内服を指示しかけたが思い止まった。どうやら、看護師が巡回した際にイライラするという訴えがあったようだ。人間は誰だってイライラすることがあるもので、そのたびに何か薬を飲んで鎮めるというのはオカシイと思ったからだ。

最終的には、
「本人から『イライラして仕方がない』というナースコールがあるほどになれば薬の内服を検討します(それでも検討どまりで、処方するかどうかは分からない)」
と答えた。結局、その後に病棟から電話はかかってこなかった。日曜日に患者と会った時には、落ち着いてニコニコしていた。

医師は、患者に不調を訴えられたり、看護師から何か報告を受けたりすると、薬を処方したり検査を指示したりしないといけない気持ちになる。多くの医師に、やや強迫神経症的な面があるのは確かだ。しかし、プロであるからには、「何もしない」という治療法があることを常に頭の片隅に置いておかなければならない。

すべてのボールにバットを振るような選手は、決して名打者にはなれないのだ。(※)


※「振って三振と、振らずに三振、どちらが良いか?」と言われれば前者と答えそうになるが、「ヒットとフォアボール、塁に出るならどちらが良いか」という質問のほうが医療に近い。そして、医師は打率より出塁率をこそ大切にすべきである(野球詳しくないと分からないか……)。

揺れる船の中の動画

これは凄い。そして、音楽選択がシュールである。

2014年4月25日

成仏しない

知人の僧侶から聞いた話である。

新興宗教にはまっていた中年女性が亡くなった。葬式は親が浄土真宗で行なったのだが、その僧侶が読経している間中、彼の耳元で、

「やめて……、やめて……」

と悲痛な声がしていたらしい。さすが僧侶と言うべきか、その声に彼は恐怖よりも哀れさを感じつつ読経を続けた。そうすると今度は、

「成仏しない! 成仏しない!!」

と叫びだし、ついにはラジオのノイズに似た高音の雑音になり、それからゆっくりと消えていった。

「読経の邪魔をする方、珍しくないですよ」

そう言って、彼は笑った。

実家の金魚

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2014年4月24日

もの凄くビックリした動画

閲覧注意!!
ありがちなドキッとする系だが、そう分かっていても驚いてしまった。雪道用タイヤのCMで、世界中でかなり観られているそうだ。いやはや、ようやるわ。

2人の子を同時に好きになっちゃったら……

2人の子を同時に好きになっちゃったら、2番目のほうを選びな。だって、1番目の子を本当に好きなら、2番目と恋に落ちるなんてありえないんだぜ。

これはジョニー・デップの言葉らしい。訳はジャック・スパロウを意識してくだけさせた。一瞬だけ良いこと言っているように見えるから不思議だ。

If you love two people at the same time, choose the second. Because if you really loved the first one, you wouldn't have fallen for the second.

2014年4月23日

折れた竜骨

折れた竜骨 上
折れた竜骨 下
なんとなくファンタジー戦記ものを予想していたら、ファンタジー系ミステリだった。そして、面白かった! いやー、好きだな、こういう雰囲気。米澤穂信の本は過去に2冊読んだんだっけか。どちらもそう面白いとは感じなかったんだけれど、これは良かった。改めて米澤の本をどれか買ってみようかという気になるレベル。一応書いておくと、二冊組で多そうに感じるけれど、中身はライトノベル。

2014年4月22日

赦す人

団鬼六(だん おにろく)という名前は、ビデオレンタル店でバイトしていた時代に何度となく目にした。それもアダルトコーナーで。俺の中では、SMものに関係している人、くらいの認識しかなかったが、どうやら「SMものの大家」であるらしい。

赦す人
それにしても凄い生き様だ。なんと言っても、とにかくカッコいい。近くにいる女性は大変だろうけれど、こんな男が近くにいたら惹きつけられるのも仕方がない。

文庫になるのを待とうとしたが、待ちきれずに単行本を中古で購入。読んだ結果、これは買って大正解。今のところまだ団鬼六のSM小説を買おうとは思わないが、『真剣師 小池重明』は買って読んでみることにする。

2014年4月21日

うつ病を血液検査で判定!? ~統計のウソを見抜け!~

血液検査でうつ病が分かるというニュースがあったが、記事の冒頭においちょっと待てよと言いたくなる部分があったので突っ込んでおく。
休日は週に1日。仕事が忙しく、日々の食事も満足に取れていなかった。発症までの経緯と症状から判断すると明らかにうつ病。だが診断はうつ病ではなく、男性の能率低下の理由は、不規則な生活による脱水症状だった。最終的には男性は食事や水分摂取などの生活指導だけで、通常通りの業務が可能になった。(中略)「男性会社員は、通常の精神科医ならば間違いなくうつ病と診断して薬を投薬するケース」と川村氏は話す。
社員の「うつ」、血液で見抜く 早期発見へ
川村総合診療所の院長がどこの大学の何科でトレーニングを積んだ人か分からないが、上記太下線部分は言い過ぎである。もしかすると、川村院長は周りにそんな「普通の精神科医」がたくさんいる環境で育った精神科医なのだろうか。俺なら最初に採血をして体の異常をチェックし、いきなり薬は出さず、まず規則的な生活を心がけさせる。

……?

あれ? 俺が普通の精神科医ではないということなのか?

それはともかくとして、この検査の感度は80%以上、特異度は95%以上である。素人目には凄い検査に見えるかもしれないが、実はスクリーニングとしてはまったく使いものにならないレベルである。恐らく記者は統計的なことは何もわからないまま、「へぇ凄いな」くらいにしか思っていないだろう。実際に数字を当てはめてみればすぐ分かる。

ある時点で、うつ病が100人に1人いるとする。10000人中に100人の患者だ。
感度が80%とは、100人のうつ病患者が検査を受ければ80人(80%)が陽性になるということ。残り20人は陰性である。また特異度95%とは、うつ病でない9900人が検査を受けて、9405人(95%)が陰性になり、495人は陽性という結果が出るということだ。

以上の結果をまとめると、10000人がスクリーニングとして検査を受けた場合、陽性と出るのは575人(80+495)で、そのうち本当にうつ病なのは80人だから、「陽性と出て本当にうつ病」なのは14%弱しかいないことになる。逆に「うつ病なのに陰性と出る人」はどうだろうか。9425人(20+9405)のうち20人であるから、0.2%、つまり1000人受けて2人は見逃されることになる。その2人は本当にうつ病で苦しんでいるのに、統計の分かっていない人から「感度80%、特異度95%の凄い検査で陰性と出たんだから、気の持ちようでしょう」などと言って帰される恐れがある。

スクリーニング検査としては、あまりパッとしないものなのである。

2014年4月18日

ごく平凡な記憶力の私が1年で全米記憶力チャンピオンになれた理由

ごく平凡な記憶力の私が1年で全米記憶力チャンピオンになれた理由
Amazonレビューの評価は非常に高いが、俺にとっては星3つかな。著者が記憶術を学んで、努力して、そして全米チャンピオンになるまでの描いてあるが、それだけでなく記憶のもつ意味や、歴史的なエピソード、サヴァン症候群などについても記載してあり、ただの「著者の成長記録」という本ではなかった。

「初日の出」の反対、12月31日の「終日の入」

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もうこれ撮ってから4ヶ月も過ぎちゃったか。

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2014年4月16日

新島々駅にて

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時を刻む

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子どもの頃、祖父の家にはネジ巻き式の壁掛け時計があって、各時刻にカーンカーンと鳴っていた。祖父が台に乗ってネジを巻いていたことを、時どきふっと思い出す。

2014年4月15日

リストカットやODをする人とどう関われば良いのか

リストカットやODをする人たちの中のごく一部に、「自分を人質」にして周囲を巻き込むために自傷する人がいる。そういう脅迫には断固として応じず、動じず、そして「人質救出」を最優先にしたい。

ところで境界性人格障害の人の逸脱行為に「徹底的に振り回されてあげる」というのも一つの関わり方ではある。ただし、それは絶対に長続きはしない。そこから新たな関わり方を模索するしかない。

あまり良くないのは、「振りまわされない!」と決意してしばらくは動じない構えだったのに、まただんだんと引きずられてしまうというのを繰り返すことだ。彼らの根本的なところにある、いわゆる「見捨てられ不安」を何度も掻きたてることになるからである。

<関連>
リストカットやODをする人に伝えたいたった一つのこと
リストカッターに対する友人や家族、治療者のあり方
『境界性人格障害のすべて』から (1)
『境界性人格障害のすべて』から (2)
『境界性人格障害のすべて』から (3)
『境界性人格障害のすべて』から (4)
人は成長する、たとえどんなに歳をとっても
リストカット

0能者ミナト<3>

0能者ミナト<3>
相変わらずバランスのとれたラノベだった。続編も購入済み。

実家の花たち

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2014年4月14日

子どもの心の処方箋―精神科児童思春期外来の現場から

ある調査を受けた1000人のうち、

(1) 11歳の時点で精神病様の症状体験をしたものは141人。
(2) 精神病様の症状を強く体験していた子ども16人のうち、4人が26歳時点で統合失調症様障害を発症。
(3) 精神病様の症状体験が軽度だった125人の子どもの統合失調症様障害の発症率は通常の5倍。

これは2000年にニュージーランドで報告された研究結果である。構造化面接を用いたコホート研究で信頼性が高く、日本を含む世界各国で同様の追試がなされ、やはり同様の結果が得られた。

日本での調査は、精神病様の症状体験の有無を以下の4つの質問から判断された。

1.超能力や読心術で心の中を読み取られたことがないか。
2.テレビやラジオからメッセージや暗号が送られてきたことはないか。
3.追跡される、話を聞かれていると感じたことはないか。
4.他人には聞こえない「声」を聞いたことはないか。

約5000人の中学生を対象に調べた結果、15%が「体験したことがある」と回答した。

子どもの心の処方箋―精神科児童思春期外来の現場から
のっけから驚くような話で始まる本書は、専門的になりすぎることなく、専門家が読んでも一般の人が読んでも理解しやすく役にも立つよう書かれていた。これまでにも「メンタルヘルス講習会」といった名目で校長先生の集まりや海上保安部職員、裁判調停員らを相手に講演をしたことがあるが、今後は本書の内容をかなり参考にすると思う。

著者によると、保険診療下でもすべての患者に長時間のカウンセリングを施し続けられる精神科医がいるとしたら、その理由は以下の3つ。
1.あまりに人口の少ない地域で診療を続けている。
2.評判が悪すぎて、長時間の診察を行なっているにもかかわらず、患者がいつまでも増えない。
3.社会的なニーズに応えようという使命感が欠落していて、患者を選んで趣味的な治療に没頭している。

この言いっぷりが読んでいて心地いい。1時間に10人、時にはそれ以上の予約患者が殺到する外来で、長時間のカウンセリングを求められても不可能だ。

さて、俺の愚痴は置いておいて、本書から参考になる話を抜粋。

まず子どもの非行について、向かい合う際の原則は、「表沙汰にして多くの人の助けを借りる」こと。
家族が腹をくくり、触法行為に対しては、きちんと警察を呼ぶという姿勢を見せたとき、子どもは家族の覚悟に気付く。そして子ども自身が自分の問題に向かい合うきっかけを得る。
これは『社会的ひきこもり―終わらない思春期』でも同様のことが述べられていた。

次は自傷行為について。
自傷は彼女らをある時期に支え、落ち着きをもたらしていたのも事実だ。暗い海で溺れそうな彼女らを救い出した、波間に漂う一枚の板切れなのだ。彼女らはその板切れがなければとっくに溺れ死んでいたかもしれない。そういう意味ではその板切れは、彼女たちにとっては生きるために必要な宝物とまで言えるのかもしれない。
『リストカッターに対する友人や家族、治療者のあり方』で、俺も自傷行為についての例え話に荒海を用いている。これは先輩医師との雑談から身につけたものだが、もしかしたら先輩もこういう本から情報収集されていたのかもしれない。

自傷行為は、ある研究によると、15年後には3分の2以上が社会適応しており、また27年後では92%の人がすっかり良くなっているそうだ。12歳から15歳くらいで始める人が多いので、「30歳で激減し、40歳以上ではほとんどしなくなる」という臨床実感とも大体一致する。ただし、これはあくまでもそれまでに「自殺しなかったら」という条件付きである。死ななければそれだけで合格であり、医師も家族もそこまで生き延びさせることが大目標になる。(関連 『リストカットやODをする人に伝えたいたった一つのこと』

この他、「子どもに関わる大人たちへ」というテーマで10のヒントが提示されていたり、診察室で子どもたちにかける10のアドバイスというものが示されたりしている。

いささか長くなってしまったのでこれ以上は書かないが、非常にためになる本だったので、ぜひ一読してみて欲しい。ちなみに、俺は中古で本体190円で購入。もとがとれたどころの話ではない。著者の宮田先生、ごめんなさい。

2014年4月11日

名古屋駅 ノーファインダー

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最近のサクラの成長ぶり!

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最近、言葉の成長もさることながら、遊びの幅が広がっていて面白い。

先日は、加湿器をスーパーのカウンターに、オモチャを商品に見たてて、自ら店員になりきって、
「しゃせー」
と言った後に、オモチャを手に取り、「ピッ、ピッ」と言いながらレジ打ちをしていた。これが2歳1ヶ月の子どものすることか!! と驚いてしまった。

また一昨日の寝る直前、寝室の俺の布団の隣に自分用の布団を敷いたかと思うと、自らそこに入りこみ、
「寝んねこ!」
と言って目を閉じて寝ようとするのだった。このまま寝たら凄いなと思ったが、やはりそこは2歳児である。しばらく本人なりにモゾモゾしながら頑張ってみたものの寝入れず、ヒソヒソ声で、
「チォちゃん(妻のことをこう呼ぶ)、チォちゃん」
と呼びかけ、最後は起き出して、
「こっちが良い!」
と妻の横に移動して眠っていた。

こういう姿にキュンキュンなる親ばかパパであった。

(写真は平成25年12月撮影)

2014年4月10日

統合失調症薬「ゼプリオン」で17人死亡

ゼプリオンという統合失調症の筋注薬を使用後に死亡した患者が、発売から4ヶ月半で17人にのぼるという調査結果が出た。

これは多い。

ゼプリオンは1回注射すれば効果が1ヶ月持続する。こういう注射を持効性注射というが、内服をしたがらなかったり忘れることが多かったりで再発を繰り返すような患者には非常に有効である。発売を待ちに待った非定型抗精神病薬の持効性注射だっただけに、この結果は重い。

現在、自分の患者でもゼプリオンを使用している人は10人弱いる。この中で、ゼプリオンを開始して明らかに状態改善した人が数名いて、これらの人たちについては継続使用するか、あるいはリスパダールコンスタという2週間に1回の注射に切り替えるかを検討する。それ以外の人については、一旦中止して内服薬に変更して様子をみるほうが無難だろう。

製造販売しているヤンセンもバタバタで大変だろうな……。

<参考>
統合失調症薬ゼプリオン使用で17人死亡例!その副作用とは?
ヤンセンファーマ社の統合失調症治療薬「ゼプリオン」の使用後に死亡した患者が、昨年11月の販売開始から4か月半で17人に上っていることがわかった。薬との因果関係は不明だが、同社は、医療機関に注意を呼びかけている。
この薬は4週間に1回、肩や尻の筋肉に注射する。使用した患者は推定約1万700人。市販後の調査で報告のあった17人の死亡例には、心筋梗塞や肺塞栓、低体温、吐しゃ物による窒息などがあった。使用3日後の例もあれば、40日以上経過していた例もあった。
同社は、薬との因果関係などは調査中としながらも、「薬剤は投与後、4か月間は体内に残る。なるべく家族らが経過観察できる患者に投与し、異常があれば直ちに受診するように十分説明を」などと医師に呼びかけている。他の抗精神病薬との併用についても、安全性が確立していないとして極力避けるよう求めている。厚生労働省も情報収集している。
同社によると、この薬は2009年以降、世界60か国以上で使用されているが、短期間に多数の死亡例が報告されたことはないという。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140409-00010000-yomidr-hlth

パキシルが回収される

パキシルという抗うつ薬に不純物が混入した可能性があるということで、昨日、パキシルを製造・販売しているグラクソ・スミスクライン(GSK)の担当者が回収について説明に来た。不純物混入に関してFDA(米国食品医薬品庁)から厳重注意を受けたことを重くみて、GSKは自主回収に踏み切ったそうだ。

経緯はともかくとして、この担当者の説明が面白かった。説明というより言葉遣いか。

「混入物による健康被害は一切報告されていませんが、弊社としましては、FDA“様”からの厳重注意を重くみまして~」

なんとFDAに「様」をつけたのだ。例えば「厚労省様」と言っているようなもので、これは過剰敬語であり、あまりにも耳に馴染まない。説明を受けながら、思わず苦笑してしまった。

<関連>
バカ丁寧化する日本語
なんでも「さん」付け
アイルランドの同社コーク工場のパロキセチン原薬の製造工程において、使用されている工業用変性エタノールの保管タンクを、一時的に廃棄タンクと接続した際に、保管タンク内の工業用変性エタノールに廃棄タンクから製造工程由来の物質の混入が認められたことにより、それらの物質がパロキセチン原薬へ混入した可能性が生じた。
http://www.qlifepro.com/news/20140407/gsk-has-recalled-paxil-after-fda-warning-letter.html

2014年4月7日

男だらけの歓迎会

先週金曜日は新任医師と新人看護師の歓迎会。「男性スタッフだけ」でやった。別に他意はなく、女性はほとんどが結婚していて、そう何回も家をあけられないから。

新任医師と話していて思うのは、
「お互いに、精神科の話に飢えていたんだな」
ということ。俺はまだ月に数回は応援に来てくださる大先輩と話せたが、新任のY先生は外来だけの病院とはいえ、独りで3年間もやったわけだから、その孤独感たるやいかほどだろう。

ところで、勤務開始して4日目という学校卒業したての新人看護師に、
「まずスタッフの名前を覚えなよ」
と言うと、
「名前覚えるの苦手なんです……」
と言う。まかさ……と思って、
「お……、俺は誰でしょう……?」
と聞くと、
「えっと……」
と答えられない。
医長の名前くらい覚えんかーい!!

「休憩室で名前も知らない人と話したり、今日もそうだけど知らない人と酒飲んだりして気まずくない?」
「いえ、そこは大丈夫なんです」
「大丈夫じゃいかんやろ!! 気まずくなれや!! そして覚えろや!!」
と、このツッコミは50代PSWのOさん。元システム・エンジニアでサラリーマン生活が長かっただけに、こういう社会人としてのファースト・ステップにはわりと厳しく、そして的確である。

食べ物はトンカツと焼きソバだけを追加注文しながら、あとはただ飲むだけなんて、男だけの飲み会ならではだよなぁ。焼酎2本空けたけれど、その大半は俺とOさんで消費したんだと思う。そんな感じで、俺が全額出したけれど6人で2万円で済んだ。

いずれにせよ、かなり楽しかったので今後も定例会のようにやりたいくらいである。

2014年4月4日

抗てんかん薬を予防的に投与するのが正しいのかどうか

60歳の女性が突然倒れ、救急外来で頭部CTを撮ったら脳出血が見つかり、手術目的で脳外科の病院へ搬送された。その病院での精査の結果、手術は必要なく保存的治療で大丈夫とのことで、改めて当院でのリハビリ目的で内科に転院となった。

この女性が病棟であれこれ問題を起こすため、知能検査を施行されたところIQは70程度であった。HDS-Rという認知症検査では30点満点の15点。そして、「高次脳機能障害」という診断をつけてサービスを受けられるようにするために精神科を紹介されてきた。ちなみに、この時点では倒れてからまだ3週間である。

実際に会ってみると、わりとしっかりした人のように見える。それもそのはず、10年前までは東京の駅ビルに入っている大手宝石店で店長を任されていた人であった。ただ、なんとなくボーッとしていて表情が虚ろ、本人も「眠くて仕方がない」と言う。内服薬を確認すると、エクセグランという抗てんかん薬を内服している。これは3週間前に搬送された病院で開始されている。エクセグランは、そう頻繁ではないが幻覚妄想やせん妄といった副作用を呈することがある。もしかすると異常行動や覚醒度の低下はエクセグランのせいかもしれない。

しかし、エクセグランを処方されているということは、てんかんがあるということだ。脳卒中の後遺症としててんかんを発症する人がいるし、彼女も本土の病院でけいれん発作を起こしたのかもしれない。中止して発作が起きたら大変だ。そこで本人や家族にてんかんが起こったのか確認したがはっきりしない。紹介状や退院サマリ、看護サマリを隅から隅まで調べても「てんかん」「けいれん発作」の記載はどこにもない。これは……、ピンときたのは過去にも同じ病院から転院してきた患者で同様のケースが何回かあったからだ。

脳外科で有名なその病院では、脳手術後や今回のケースのような時に「予防的に」抗てんかん薬を処方されていることが多い。というのも、てんかん発作の既往がないのに抗てんかん薬が処方されている患者が時々いるのだ。患者も家族も「なぜか知らないけれど処方されたから」とあまり疑問も持たずに飲んでいる。そのせいで過鎮静に陥っている人もいた。今回もきっとそのパターンだ。

そういうわけで、エクセグランを中止して数日後。目がしっかりと開いて明るい表情になった彼女は、HDS-Rで26点まで回復した。恐らくこの状態で知能検査をすれば、前回よりもかなり良い点数が出るだろう。エクセグランを中止してだいぶ経つが、未だにてんかん発作は起こっていない。

もしかしたら脳外科では、
「術後、てんかん予防のために抗てんかん薬を内服することが良好な予後につながる」
というデータがあるのかもしれないが……。誰か知っていたら教えてください。

聖域

聖域
篠田節子のホラーではないし、Amazonの紹介にあるような「傑作ミステリ」では断じてないし、どういう分類が正しいのか分からないけれど、なんだかちょっと切ない話。宗教がらみのストーリーだが、別に宗教に造詣がなくても読める。

蔵書にするか迷ったが、図書館に寄贈する気にもなれず、蔵書決定。

第一印象の大切さがよく分かる心理実験


ちなみに、この実験が紹介されていたのはこの本。レビューの高さから分かるように、非常に面白いのでお勧め。
ファスト&スロー (上):あなたの意思はどのように決まるか?

2014年4月3日

コンサルタントの秘密

「1番の問題を取り除くと、2番目が昇進する」

これは、精神科の診察室で何度となく経験する法則である。こうして次々と昇進してくる問題を精神科医がモグラ叩きのように解決していくと、いずれ患者は精神科医を「モグラを叩いてくれる人」と思うようになるだろう。それは患者にとって良いことなのだろうか?

個々人の問題はそれぞれが自分で解決しなければならない、というのが俺の考え方である。だから精神科医としてはモグラを「叩く人」ではなく「叩き方を教えてくれる人」でありたいし、もっと言えば「何かしてくれるというわけではないけれど、自分が叩く時に側にいて、叩き損ねた時に照れ笑いに付き合ったり、手首を痛めた時に労わってくれる人」くらいになりたい。

カウンセリングや精神療法といったものは、いわば患者の人生に関するコンサルタントみたいなものだ。企業のコンサルタントは自ら解決法を提案することはしない。その企業で働く人以上にその企業のことを分かっているコンサルタントなどいない。そして、これはもの凄く需要なことだが、コンサルタントが経営者以上に損失を受けることはない。精神科も同じだ。患者以上に患者に詳しい精神科医はいないし、患者以上に医師が損害をこうむることはない。

コンサルタントの秘密―技術アドバイスの人間学
というわけで、日常診療の役に立つかもしれないと思って読んでみた。予想通り、非常に示唆に富む本で、若干の読みにくさはあるものの、それを補うに充分な内容だった。その中で印象的だった話を一つだけ。

盲人たちが集まって象を触り、それぞれが、
「木のようだ」
「蛇のようだ」
「縄のようだ」
「家のようだ」
「鎗のようだ」
「毛布のようだ」
「家のようだ」
と感想を述べたという話がある。
企業コンサルタントにおいて、盲人とは各部署で働く人ということになる。彼らは会社全体のことを自分の部署だけで判断してしまう。彼らに象(会社)をより詳しく把握させるためにはどうしたら良いだろう。

盲人(従業員)になるべくたくさんの場所(部署)を触らせるのも一つの方法だし、象(会社)のミニチュア(概要など)を用意するのも良い。これらはいずれも優れたやり方であるが、最良の方法には遠く及ばない。

では、最良の方法とは何か。

実際に盲目を癒すこと。


さて、これを読んでどう活かすか。それはやっぱりその人次第。

2014年4月2日

知性と精神力は、精神科医にとっての「真剣」だ

精神科医にとって、患者と向き合った時に頼ることができるのは、自らの知性と精神力だけである。それはまさに1対1の真剣勝負であり、こちらの手には知性と精神力という刀が握られている。

昨年度一年間は、この刀一本で斬って切って伐りまくった。どんな名刀も、休ませることも磨くこともなければ切れ味が鈍る。まして自分は逸品ではなく量産刀である。斬れなくなった刀での勝負では、突き刺すことが中心の、どうしても単調な攻めになってしまう。俺の診療が最も鈍ったのは、昨年末から今年の初めくらいだろうか。2月から3月にかけては、あと少しの辛抱で援軍が来るということが、刀を振る俺にとっての希望の光となった。

この一年間、初診患者や調子を崩した人には、処方をした後に「2週間後」の再診予約をとることがほとんどだった。本来は「1週間後」が望ましいのだが、そんな密なことをしている余裕はなかった。3月半ばくらいから、援軍を見越してこういう密な診療をできるようになり、これは当然患者にとってもプラスであるが、「納得のいく診療をしている」ということが自分の精神衛生にとっても大きな糧となった。

いざ2人でやってみて、まだ一日しか経っていないが、やはり刀を振る者が2人いるというのは良いものだ。新任医師の患者数はまだそう多くないが、それでも知性と精神力という自らの刀を研ぐ余裕ができる。今後、彼の受け持ちが増えていけば、量産刀に磨きをかけて名刀に近づけることも可能かもしれない。

それにしても、一年間をとおして刀を酷使してきて、折れなかったのがせめてもの幸いだったとしみじみ思う。

2014年4月1日

『とりあえず俺と踊ろう』が本になります! \(^o^)/

このブログの中からセレクトされた記事が本になることが決定した。もちろんほとんどに加筆が必要だけれど。

ちなみに自費出版ではない。れっきとして出版社、新潮社である。最初は何かの詐欺かと思って慎重に対応していたが、どうやら本物のようだ。新潮社のホームページに記載してある電話番号にかけて、担当の人と話したから間違いない。

ただ、このブログ名『とりあえず俺と踊ろう』をタイトルにすることはできないらしい。できない、というより、それだと売り出せないということみたい。なるほど、こんなタイトルの本が書店に置いてあっても何の本か分からないもんね。

担当者のA・Fさんとああでもないこうでもないと話し合い、「精神科医の~」といった感じのものが良いだろうということになった。そこで、最終決定のタイトルをここに掲載しておくことにする。


『精神科医のエイプリル・フール』


今日は4月1日ですね。お粗末さまでした。