2014年9月17日

リスクにあなたは騙される

2001年に起きた米国同時多発テロのあと、アメリカ国民は飛行機の利用を避け、かわりに自動車で移動するようになった。飛行機事故での年間の死亡数は全世界で1000人前後である。これに対し、推計によると、アメリカで、テロ後1年の間に飛行機ではなく自動車移動を選んだことによる交通事故死亡者数は、約1600人にのぼるらしい。

「リスキーに見える」ものを避け、「よりリスキーなもの」を選択してしまった結果、実質的な被害が増加したということである。

まったくの空想だが、今のデング熱騒動で閉鎖された公園でジョギングしていた人たちが路上を走り出した結果、交通事故で重症を負うか亡くなった人がいるかもしれない。こうなると、マスコミが大騒ぎするせいでデング熱が「リスキーに見えるもの」になり、路上を走る「よりリスキーなもの」を選んだということになる。最初に書いたように、まったくの空想ではあるが。

ちなみに、「デング熱が重症化してデング出血熱になる」とマスコミが脅すのでデング熱が怖くなるが、デング出血熱は「デング熱に感染して回復した数週間後に、別の型のデング熱にかかった場合になる可能性がある」。頻度としてはデング熱1万人のうち出血熱になるのが25人。そしてそのうち、死亡率は1%である(世界全体のデング熱患者は年間1億人、そのうちデング出血熱患者が25万人で死亡者が2500人といったところか)。

リスクにあなたは騙される

リスクに関する啓蒙書として非常にレベルの高い本。翻訳が若干こなれていないところもあるが、全体を通してそう読みにくいことはない。

とにかく内容が素晴らしい。上記のテロの話は、本書で紹介されていたエピソード。


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