2014年1月20日

ワールド・ウォーZ

ワールド・ウォーZ
原作と違い過ぎて、よくまぁ原作者のマックス・ブルックスがこれで良しとしたなと疑問符がついた……。ゾンビ映画と言って良いのかどうかもよく分からない。

感染して十数秒で発病するような病気、それもこんなに恐ろしい症状の出るものが、ここまで世界的に流行することはまずありえない。交通手段の進歩で世界が狭くなったとはいえ、潜伏期がわずか10秒程度の重篤な病気なんて、一部地域で猛威をふるって、そこに住む人がすべて感染したら終わりだ。

「ゆっくり動くゾンビなんて怖くない、楽勝だ。あんなものが世界的な脅威になることなどありえない」
という意見を持つ人が多いが、それは違う。もし現実に日本でゾンビが発生した時のことを考えてみよう。あなたの目の前には、変な動きをしている男がいるとする。実はゾンビなのだけれど、まだ世界的にパニックになる前で情報もほとんどない。彼があなたに抱きついてきたら、
「え? ちょ……、ちょっと……、やめてください」
くらいの感じで引き離そうとするだろう。そこで噛まれてしまえば、はい、あなたも感染者。

それでゾンビ化した人が増えて問題になりだした場合、北朝鮮ならまだしも、先進国でいきなり彼らを抹殺という話にはならない。まず治療法を探そうとする。そのためにゾンビ化した人を捕獲して、隔離拘束しようとするんだけれど、その過程で従事者の何人かが噛まれるなどして感染する。そんなマヌケなことがあるはずない? 全国の病院で、年間に針刺し事故がどれくらいあるだろう。患者に殴られる看護師も少なくない。不運な事故というのはそういうものなのだ。

こうしてある程度パニックが進行した段階に至って初めて、人々は「生きるためには殺るしかない」という意識に目覚めるだろう。ゾンビ映画というのは、たいていパニック発生後を描いているが、最初の段階というのはこうやって広まっていくものなのだ。ゾンビの頭に躊躇なく斧やナタを振るえるようになるまでには、乗り越えないといけない心理的・社会的なステップが結構あるということだ。

そういう段階では、ゾンビもかなりの数になっている。頭に斧を振り下ろせば退治できても、あなた斧を一日に何回振る自信がありますか? 100回? 起きている時間が18時間として、1時間に6回くらいならいけるかな。1000回だったら? 1時間に60回、それも18時間もぶっ通しで斧振れる? 

疲れたら逃げるという選択肢もある? そりゃその場は逃げきれるだろう。でもゾンビはあのゆっくりした動きで、数千人、数万人、数十万人がぞろぞろやって来るわけで、しかも昼夜を問わない。マラソン選手なみの人が3時間走って逃げて引き離しても、ゾンビは24時間休まず歩いて追いかけてくるんだよ。それで逃げ切れるなんて考えるほうがおかしいでしょ。

いやー、久しぶりにゾンビについて熱く考え語ってしまった。改めて、ゾンビの怖さとは何なのかを明らかにしておこう。

ゾンビとは、数の暴力なのである。


ちなみに、ゾンビファンにとっては原作がかなりお勧め。
WORLD WAR Z 上

2 件のコメント:

  1. ゾンビ…ゾンビものはどれも未だに怖いです。初期の映画で言うと未だにバタリアンシリーズもB級コメディと言われながらも「噛まれたら自分もゾンビ」ってトコと多数で襲って来るのがもう…!漫画もアイアムヒーロー最新刊が出る度に読後悪夢に襲われますよ~(汗)
    でも読んじゃう。ゾンビは元同じ人間が人間の形で人間じゃない何かになってしまって、意思疎通も出来ずに多数で襲って来て、噛まれたら自分もゾンビ…。あの救いの無い感じが猛烈に怖いです。

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    1. >ゆうさん
      アイアムヒーローも面白いですよねぇ。
      俺も子どもの頃、バタリアンを観て震えましたよ(笑) 大人になって観なおしてみて、やっぱり怖いし面白いと感じたんですけど、最近の映画に慣れてしまった医学部の同級生たち(だいたい7歳下)には分からなかったみたいです……。

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