2013年9月30日

模倣品に注意!!

Canon バッテリーパック  LP-E6
6000円以上も出して買った「純正品」が、実は模倣品だった。充電はできないし、どういう具合でそうなるのか、付属の純正品のほうの撮影回数がリセットされてゼロになってしまった。今のところ他の不具合はないが、もしかしたら本体にもトラブルが発生しているのかもしれない……。

Amazonレビューは模造品に騙された人たちの非難の嵐。にもかかわらず、Amazonは未だ対応していない様子。俺がこれを買ったのが平成24年12月で、昨日が初使用、そして使えなかった。Amazonに返金してもらえるか確認中。とんでもない商品だ。

<参考>
キヤノンの注意呼びかけ

永遠の0

永遠の0
半分で断念。

ストーリーに無理がある。祖父のことを調べようとしている若者に対して、戦争についてこんなに事細かに語る老人なんて想像できない。戦史・戦記を無理やりに小説の中に押し込めたという印象で、それなら参考文献にあるような戦史や戦記を読んだ方が一貫性があって読みやすいだろう。結局、ストーリー性と戦史・戦記の二兎を追おうとした感が否めない。

世間的に評価は高いみたいだけれど、俺としてはAmazonレビューの星1つの人たちに賛同。図書館寄贈。

2013年9月29日

大阪駅周辺

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本当に何もない田舎に住んでいると、都会がシャッターチャンスの宝庫に思える(笑)

2013年9月27日

経産キャリアの匿名ブログが炎上、停職2ヶ月の懲戒処分の異常さ

経産省のキャリアが匿名のブログに暴言を書き、それがネット上で拡散されて炎上し、ついには身元を突き止められて懲戒処分を受けるに至ったそうだ。

このブログの著者の言動に問題があることは確かだろう。だからといって、そのことが、
『匿名ブログから著者の身元を突き止め、徹底的に追い詰めることは正義である』
ということにはならないはずだ。

一般人が憤って、あるいは面白おかしく炎上に乗っかっる分にはまだ良いだろう。しかし、言論媒体であるはずの新聞が、匿名ブログから身元を突き止められて職場で懲戒処分まで受けてしまうことの異常さを指摘せず、それどころか炎上する世間に追従するような記事を書くことのほうが問題だ。こういうキャリア官僚がいることは確かに嘆かわしいし腹立たしいし怖くもあるが、新聞が無思慮に世論迎合するほうがもっと恐ろしい。

ブログが公務時間に書かれていたのなら、そのことは責められるべきだろうが、もしそうでないとしたら、著者は自分の時間をつかって私人として、しかも匿名で書いていたブログの内容で公的に懲戒処分を受けたわけだ。このことの異常さにメディアが気づいていないのだとしたら、この国の言論というものの行く末は儚い。
経産キャリア:ブログに暴言、炎上 停職2カ月の懲戒処分
毎日新聞 2013年09月26日
経済産業省の男性キャリア官僚(51)が匿名ブログに、東日本大震災に関連して「復興は不要だ、と正論を言わない政治家は死ねばいいのに」などと書き込んでいたことがわかった。同省は26日付でこの官僚を停職2カ月の懲戒処分にした。
問題の書き込みは2011年9月25日付。被災した三陸海岸沿岸は「ほぼ滅んでいる過疎地」で、高齢者が既得権を主張するため復興費用の負担が日本中に回されているという趣旨の書き込みをし、政治は「綺麗ごとばかり」と主張していた。書き込みはネット上で次々と転載され、厳しい批判を浴びていた。
この官僚は経産省や防衛省で課長を歴任し、今年6月末から日本貿易振興機構(ジェトロ)に出向。15年のイタリア・ミラノ国際博覧会の日本政府代表も務めていた。ジェトロによると、今月25日に不適切な書き込みをしたことを認め、ジェトロを辞めたという。
今年6月にも総務省から復興庁に出向して福島県の被災者支援を担当していた参事官が、ツイッターで市民団体や国会議員を「左翼のクソども」などと中傷していたことが表面化。停職30日の懲戒処分を受け、出向元の総務省に異動になった。【松田真】
http://mainichi.jp/select/news/20130926k0000e040194000c.html

暑い夏だから

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ぐったり。

凶悪-ある死刑囚の告発

凶悪-ある死刑囚の告発
怖い!

犯罪者、凶悪人は、鼻をひくつかせ嗅覚を最大限に高めて、獲物の放つにおいを嗅ぎとるのだろう。我々一般人は、彼らのアンテナに引っかからないよう最大限の注意をしておくべきだ。

ところで、この本は最近映画にもなったようだ。そしてこの配役は、特に『先生』と称される人の写真がえらいハマっている(笑)

映画『凶悪』

2013年9月26日

奇跡の脳 脳科学者の脳が壊れたとき

奇跡の脳 脳科学者の脳が壊れたとき
脳神経解剖学者の筆者が、脳動静脈奇形からの左脳出血を発症した直後にどういう体験をし、そしてどういう後遺症を負い、さらにそこからどうやって機能回復したかを綴ってある。

面白いかどうか、という点では微妙。ただ、同じような病気で後遺症を負った家族がいる人には、本書のそこかしこにリハビリのためのヒントが隠されているんじゃないだろうか。

大満足な内容ではなかったが、公私ともに参考にする日があるかもしれないので蔵書しておくことにした。

筆者がTEDに出演した時の動画があった。

2013年9月25日

私は障害者向けのデリヘル嬢

私は障害者向けのデリヘル嬢
うーん……。この本に対する俺の評価は、Amazonレビューの★3つの長文の人の感想が一番近い。

「愚痴多すぎ」だ。

それに、前半部分から伝わってくる著者の「性的だらしなさ」には少々閉口してしまう。もしこの人を、中村淳彦あたりが取材して本にしたとしたらどんな風に書かれるだろうか。きっと手厳しい言葉が並べられることだろう。

うつ状態でメンタルクリニックを受診したエピソードにも、この著者の他力本願ぶりというか、他罰的な考え方というか、そういうところが滲み出ていてあまり良い気がしなかった。

個人的には、障害者と性を扱ったものではホーキング青山の本『セックスボランティア』のほうが好き。

図書館寄贈。

待ち人、歩く人

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大阪駅周辺、ノーファインダー撮影。

2013年9月24日

みのもんた騒動に、ちょっと一言

みのもんたの息子が窃盗容疑で逮捕されたことで、みのもんたがやたら攻撃され、責任を問われているようだ。みのもんたは個人的には嫌いなので、彼が責められている姿にかすかな快感を得ている自分がいて、ただそんな自分に対してちょっと不快感がある。

それはともかくとして、20歳をこえた人間の犯罪に親はどこまで責任を持つべきなのだろうか。子どもが犯罪に手を染め、その話が親の職場に広まって居心地が悪くなって自発的に辞める、というのは分かる。しかし、周囲が「親の責任」というカードをちらつかせて親に辞職を半強制するのはおかしい。

海外のことは知らないが、少なくとも日本には犯罪者家族を追い詰める文化(?)がある。親兄弟の家や職場の住所・電話番号などを突き止め、そこに電話をかけたり手紙を出したり、実際に突撃したりする。こうして親兄弟を徹底的に痛めつけようとする連中は犯罪者並みに異常性格だろうし、それが正義だと思っているなら実際の犯罪者より始末が悪い。ネットが普及したからこういうことになったのかというとそうでもなく、ずっと前から似たようなことはあっていたようだ。

良いか悪いかは別にして、アメリカでは銃乱射事件の後、犯人の親にたくさんの手紙が来たらしいが、中身のほとんどが慰めや励ましだったそうだ。さすがに俺もここまで寛容にはなれないだろうと思うし、被害者や遺族のことを考えると受け容れきれない文化ではあるが、これはこれで素晴らしいと感じる部分はある。

みのの場合は、報道番組(?)の司会をしていたこともあり、立場上そのまま仕事を続けるというのはさすがに無理がある気がする。これまでの彼の発言を検証してみれば、時には犯罪者の親の責任について厳しい言及をしていたこともあるんじゃないだろうか。それから犯罪者ではないが、鳩山由紀夫の小遣い問題などの時にどんな発言をしていただろうか、ちょっと気になる。

<関連>
加害者家族



路上ライブ @大阪

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2013年9月21日

神社のお祭り

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この日は前夜祭ということだったが、それなりに人はパラパラといた。

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夜のこま犬には、凄味がある。

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出店は全部で5店(笑)

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流沙の塔

流沙の塔〈上〉
流沙の塔〈下〉
う、うーん、微妙……。船戸与一の熱意が空回りしているような印象。そして、最後に救われる者もいないという、何とも言えない後味の苦さ(決して後味が悪いわけではない)。もうちょっと明るいラストはなかったものか……。

図書館寄贈(できるか怪しい。古本なので、上巻の綴じが緩んでいるのだ……)

2013年9月20日

人魚の季節に晩餐を

「この島には、夏になると人魚がやってくる漁村があるんですよ」
彼女は、僕の反応をうかがうような表情でそう言った。そこら中から押し寄せてくる蝉の声が、ひときわ大きくなったような気がした。

二十代最後の夏、一人旅の途中だ。
毎年、蝉の声が聞こえ始めると僕はいてもたってもいられなくなって旅に出る。高校三年生の時に身についた悪癖のせいだが、恋人にも教えていないし、知ったら二度とキスなんてしてもらえなくなるだろう。僕自身はグルメだと思っているのだが、ゲテモノ趣味と言われても仕方がない。夏の一人旅はこれで十一回目になる。旅の目的地は例年どおり適当に選んだ。今回はなんとなく島にしてみた。

テント以外のキャンプ用具をリュックに詰めて、僕は船に乗り込んだ。わりと小ぶりな船ですんなりと着いたはいいものの、そこはタクシー乗り場なんてないような小さな港だった。船から降りた人たちは、皆それぞれ家族と思われる迎えの車に乗っている。バスもなさそうだ。
ネットで印刷した地図では民宿もそう遠くなかったはずだと思い、歩くことにしたのだが、地図にない小さな道が多くて行きつ戻りつするうちに自分の位置を見失ってしまった。途方に暮れかけたころ、白いワンピース姿の若い女性が声をかけてくれた。恥ずかしながら道に迷ったと言うと、「同じ方向だから」と民宿まで案内してくれることになった。
その道すがら、人魚がやってくるという漁村の話をしてくれたのだ。

「それで、どうすると思います?」
彼女はイタズラっぽい表情で、僕の顔を覗き込んだ。間近で見ると、どことなく初恋かつ初体験の子に似ていて胸が高鳴った。胸元から白い肌が見えた。
「どうするっていうと?」
「そのやってくる人魚を」
「え……と、みんなで人魚をつかまえるとか……?」
ふふ、と彼女は笑って、半分あたり、そう言った。
「つかまえて食べるんですかね? ってことは、その村の人たちって、もしかして不老不死? たしか、人魚の肉を食べたら不老不死になるって言いません?」
「あはっ」
と彼女はおかしそうに吹き出した。
「確かにそんな伝説ありますね」
「まぁ、ただの昔話みたいなものですよね。僕は嫌いじゃないけど、そういう話。それに実際に食べられるんなら食べてみたいな。不老不死には興味ないけど」
「じゃ何のために食べるの?」
「いや、単に人魚の味に興味があるってだけで」
半ば本気で言ったつもりだったが、彼女は本気にしていないのか、ふーんと言ったきり、また別の話をし始めた。細い路地を右に曲がり左に曲がりしながら僕は会話を楽しんだ。

三十分も歩いたろうか。少し先に海が見えた。テトラポッドもある。地図では分からなかったが、民宿までは意外に距離があったようだ。毎度のことながら、地図を読むのは下手だ。一人旅には向いていないのだろう、と苦笑する。
「もうすぐですよ」
夏の日差しにうたれすぎて、汗がシャツにはりついている。背中のリュックも重く感じる。さすがに歩き疲れて、返事もあいまいになってしまった。そんな僕の様子に気づいてか、
「ちょっと休憩しましょうか」
そう言うと、彼女はテトラポッドに上った。ワンピースが風に揺れ、白い柔らかそうな太ももが顕わになった。思わず見とれてしまった。テトラポッドに上るのは高校以来だ。潮風で汗がひいていくのが気持ちいい。彼女の後ろ姿が青い海に映える。しばらく、海と彼女を眺めていた。彼女はふと座り込み、テトラポッドの下の海面を覗き込み始めた。
「魚か何かいますか」
「人魚が」
そう言って、彼女はふふと笑った。そのなにげない雰囲気が、やっぱり初めての子に似ていて、僕は思わずくらくらしてしまった。彼女の近くに行こうとしたその時、
「おーい」
さっき通った路地のほうから男性の声が聞こえた。振り向くと、麦わら帽子をかぶった作業着姿の人が、小走りにこちらへ向かっていた。
「あぶねーぞー」
ひょっこらひょっこらと跳ねるように走る姿がおかしかった。
「知り合いですか?」
そう言って振り返ると、彼女がいなかった。落ちたのかもしれない。あっ、と声を出して、僕は慌ててテトラポッドの下を覗き込んだ。波のたてる音がテトラポッドに反射して不思議な響きをつくっていた。
「おい、あんた」
肩で息をしながら男性が言った。
「あぶねーから、こっちゃこい」
「この下に、若い女性が」
僕は海面を覗き込んだまま叫んだ。
「いーから! こっちゃこい!」
その声の剣幕に驚いて顔をあげると、
「死にとーないなら、こっちゃこい!」
男性の必死の顔と声にうながされて、僕はテトラポッドから海岸に降りた。

「人魚の季節にテトラポッドに乗る奴なんざ、久しぶりに見た」
男性がため息をつきながら首をふった。呆れたという様子がありありと分かる。
「あの……、人魚の季節って……?」
「あぁ、あいつらは夏になるとやってくんのよ、この村に。よその村や他の島に来たって話は聞かねぇから、きっとこの島のこの村だけなんだろうな」
「なんかあるんですか、この村に?」
「いや、なんもねぇ」
「だったら、なんで」
男性が右足のズボンの裾をたくし上げた。僕は思わず唾を飲み込んだ。男性の筋肉質なふくらはぎは何ヶ所もえぐれていて、瘢痕となってひきつれていた。人の歯形のような古い傷もあった。
「人をとって喰うために来るんだ」
「え……、人を……ですか?」
「それであいつら不老不死になれるってんだから、こっちゃたまったもんじゃねぇ」

テトラポッドの底のほうで、大きな魚が暴れるような、そんな音がした。
僕は背中のリュックを地面におろした。さっきの女性の顔や体を思い出すと同時に、高校三年生のときの「初めて」の子の記憶が甦ってくる。ゆっくりリュックを開けると、中の調理器具がぶつかり合って硬い響きをたてる。
まさか、人魚と食の好みが同じとは。
僕は男性の脂肪の少なそうな足を見ながら、リュックにしのばせたナイフにそっと手を伸ばした。

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天涯の砦

天涯の砦
やっぱり面白い小川一水。今のところ、SF作家の中で一番好き(と言っても、他の著者をそう多くは知らないけれど)。

SFというと食わず嫌いの人も多いかもしれない。実際に俺もそうだった。「えー、なんか幼稚」みたいな。アメリカのテレビドラマ『スタートレック』なんてダサい、そう思っていた時期もあった。でも『スタートレック』にしても、実際に観てみると奥が深くて、あれは未来を舞台にして宇宙人や未来装置などが出てくるけれども、あくまでも「人間ドラマ」であり、そこがとっても面白い。

SF小説も同じで、舞台、設定は未来でも、中で活躍する人間たちは、現代の自分たちと考え方や行動がそう違うわけではない。もちろん、未来にできた新しい法律などがあれば、それに則った思考・行動になっていくにしても、感情の動きは現代人のそれをトレースする。

本書は、宇宙で事故に遭った人たちの生き残りをかけた群像劇。視点が少しずつ変わるので最初は戸惑うかもしれないが、きちんと整理されているので混乱することはほとんどなく、すぐに慣れる。面白いのでお勧め。

蔵書決定。

2013年9月19日

実家の植物たち

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自白の心理学

自白の心理学
冤罪に関する本を読むと、毎回のように肝が冷える。無実の罪で死刑判決、そんなこと自分や家族の身には降りかからない、とは思うが、きっと冤罪に振りまわされた人たちも同じように思っていたはずだ。

本書では、どうして冤罪が起こるのかという構造論ではなく、どうして「うその自白」をしてしまうのかについて分かりやすく解説してある。『影響力の武器』という凄く良い本があるが、その本を先に読んでおくと、「うその自白」をする人たちの心というものが著者よりさらに踏み込んで考えられるような気がする。

蔵書決定。

2013年9月18日

実家の周りを散策

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この日は8月11日。あまりの暑さに散歩も早々に切り上げた。

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同じ風景をトイデジキングで。

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七都市物語

七都市物語
カバー・イラストに騙されてはいけない。これは地球上の、近未来での戦争(それも空の利用をシステム的に禁止された世界での)を描いた短編集で、イラストのように神話めいたものではない。戦略や戦術といったものよりも、「戦争」「政治」といったものをアイロニカルに語る小説で、いずれも読み飽きずに楽しめた。

蔵書決定。

2013年9月17日

空から恥が降る

空から恥が降る
写真家・藤原新也のホームページに掲載された文章を書籍化したもの。というわけで、やはり全体としてのまとまりには欠けるところがあり、一冊の書物として読むには疲れてしまう。こういうものは、毎回の更新のたびに読むのが良いのであって、そうやって少しずつ藤原新也の文章に触れていくことで、彼の言葉が読み手の中でまとまっていくのだと思う。それをこうして一冊にすることで、「まとめてしまうとまとまらない」という奇妙なことになってしまうのではないだろうか。

図書館寄贈。

妻の実家近く

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2013年9月14日

お地蔵さん

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そこに、そっとある、ということ。

2013年9月13日

灯暗境の小鬼たち

父はビールを飲んでいた。母は台所で作った料理を庭に運んでいた。祖父は酔っ払って顔を赤くし、祖母はそんな祖父をからかっていた。叔父たちはバカ話をくり広げ、叔母たちから冷ややかに流されていた。

夏休み、お盆。
祖父母の家の庭にテーブルを出して、大人たちは酒盛りをしていた。弟と妹は、すでに家の中に入っていとこたちとテレビを観ていた。道路向かいの田んぼで、蛙たちが鳴いていた。少し離れた家から爆竹の音と、人の笑い声が響いてくる。僕は弟たちには混じらず、かといって大人たちの輪にも入れなかった。六年生にもなると、弟や妹、従弟らと一緒にテレビを観るのが嫌だった。かといって、大人の話にもついていけない、そんな中途半端な立場で、大人たちより少し離れて座っていた。

家の裏にある池に注ぐ山水の音が聞こえる。水の跳ねた音がしたのは、鯉かニジマスか、あるいはフナか。昼間には、従弟たちとこの池で釣りをした。鯉は釣っちゃダメ、ニジマスかフナだけよ、と祖母が言った。周りの大人たちは子どもらを囃したてた。釣りかけた魚が運よく逃げ出すと、子どもたちはため息を漏らしたり舌打ちをついたりした。大人たちは、そんな子どもの様子を見てどっと沸いた。鯉が釣れると、祖父は慌てて針を外しにかかった。魚たちは苦しそうにピチピチと身をよじりパクパクと口を動かしていた。釣ったニジマスやフナは、その日の食卓に乗った。そんな池の方でまた、魚の跳ねる音がした。

家の中から子どもたちの笑い声が聞こえる。お笑いでも観ているのだろうか。大人たちが一斉に笑った。こちらは酔った誰かの冗談が面白かったのだろう。僕は空を見上げた。月は山かげに隠れていて、そのかわり、星がたくさん見えた。ずっと遠くのほうから犬の鳴き声がした。たぶん、山本さんちのシロだ。

また、魚が跳ねた。

なんとなく気になって、池の方へ行くことにした。酒盛り用に出した照明の灯りは、僕が一歩進むごとに弱くなる。子どもたちの笑い声が遠くなる。大人たちの話し声が遠くなる。数歩先には、灯りのぎりぎり届くところと、まったく届かないところの境目があった。境目の向こう、闇の側に向かって、僕は跳ねた。

水たまりの上に着地して、パシャと水が広がった。子どもたちの笑い声が聞こえなくなった。大人たちの笑い声も止まった。僕は、おそるおそる後ろを振り返った。庭の灯りの中、大人たちがこちらに顔を向けていた。境目をこえた僕の姿は、大人たちに見えているのだろうか。すごく不安になった。戻ろうと思い足をあげたが、うまく進まない。声を出そうとしても、出てこない。水たまりの上でもがいた。

ピチピチ、パクパク。

「おいでよ」
子どもの声が背中から聞こえたような気がした。いつの間にか近くまできていた祖母が僕の手をつかみ、闇に向かって、
「シッシッ」
と野良犬を追い払うように手を振った。僕が灯りの側に入ると、うしろから、いくつかのため息と舌打ちが聞こえた。同時に、体の大きな何かがどっと笑い合うような濁った響き。

そして。
また。
魚の跳ねる音がした。

夜の海

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臨場

臨場
やっぱり面白い横山秀夫、ハズさないねぇ。手持ちの横山在庫がなくなったので、再来週に本屋で二冊入手予定。新刊は文庫になるまで我慢中。

2013年9月12日

島の怪談 海上の祭り

この島で、続けざまに二件、小型漁船の遭難事故があった。どちらも、夜中に一人で漁に出て、朝になっても帰ってこないので騒動になった。一件目では船は見つかったものの、乗っていた漁師は見つからなかった。二件目は、無事に救出されたものの、以後、漁には出たがらなくなったという。生死の境をさまようような遭難をしたのだから当然だ、と周囲の人は考えた。しかし、どうやらそういう理由ではないらしい。

漁師の語ったところは、こうである。

夜の海で、自分の位置を見失った。あつい雲にさえぎられて、月明かりも届かない。少し霧も出たせいか、島影すら見えない。初夏とはいえ、海の上、少し肌寒くなってきた。無闇と動きまわると、燃料を使いきってしまい危険だ。エンジンを切って、甲板に寝ころんだ。朝までこのまま待とう、そう腹をくくったときだった。

「おーい」

遠くで人の声。
いやまさか。
風か。
それとも波の音か。

「おーい」

また。
今度は、少し近い。
風でも波でもない。
明らかに。

「おーい」

人の声。
それも、さっきよりさらに近い。
上半身を起こした。
救助か。
いや、それはない。
朝になっても帰らない船が遭難と判断されるのだから。
まだ自分は遭難したことにはなっていないはずだ。
となれば、この声はいったい。

「おーい」

それに、この声は、聞き憶えがある。
あたりを見渡すと、また、

「おーい」

声のするほうを見た。
いた。
この前、遭難した男。
漁師仲間だった。
彼が、いた。
海の上に。
立っていた。

「おーい、おい、おい、こっち、こっち、こっち来い」

笑いながら、彼はそう言った。
手まねきまでしていた。
ぞぞぞ、と、全身の毛穴が立ち上がるのが分かった。
顔をそむけた。
目を閉じた。
それでも、声は聞こえてきた。

「おい、ほら、おい、ほら」

波の音に合わせるかのように、リズミカルに。
屈託なく、明るい声で。

「こっちに来い、ほら、こっちに来い」

耳をふさいだ。
頭を振った。
幻覚だ、妄想だ。
やめてくれやめてくれやめてくれ。
それでも、かすかに声が聞こえる。

「おいほら、おいほら、こっち来い、ほら、こっちに来い」

とにかくひたすら耳を押さえ、目を閉じ、甲板にうつ伏せた。
どれくらい経っただろうか。
ふと気づくと、声が聞こえなくなっていた。
おそるおそる、耳から手をはなした。
声は、聞こえない。
目を閉じたまま、頭を上げた。
ゆっくり、ゆっくりと、薄目を開けた。
そこには。
海の上には。
数えきれないくらい人がいた。
皆、笑顔で手招きしていた。
何年か前に遭難した近所の爺さんもいた。
子どものころ、海で溺れて死体があがらなかった友人の姿もあった。
あまりの現実離れした光景に、ふっと自分を見失った。
みんな、笑っているじゃないか。

「おい、ほら、こっち、ほら、ほら、こっち、こっち来いって、こっち来い」

祭り囃子のようにさえ聞こえる。
なんだ。
楽しそうじゃないか。
俺も。
腰を上げかけた時、少し大きな波で船が揺れた。
よろめいて、尻もちをついた。
尾てい骨に響いた痛さで、我に返った。
危なかった。
もう少しで。
落ちていた。
恐怖心と怒りとを混ぜ合わせて、彼らを睨みつけると、

こいつら……、なんて顔をしてやがる。

もう、誰も笑ってはいなかった。
怒り顔でもない。
泣き顔でも、悔しそうな顔でもない。
これは、そう、漁協の宴会のときの、乾杯待ちの顔だ。
酒を飲むのが待ち遠しくてたまらない、そんな時の……。

ソワソワ、ワクワクした表情。

待ってやがる。

俺が落ちるのを。

釣り針で指先を突いた。
叫びながら、何回も何回も。
自分を見失わないように。
我を忘れないように。
朝が来るまで、彼は指先だけでなく体中を刺し貫いた。

彼が救助されたとき、服に広がった血の染みは、赤い水玉模様となっていたそうだ。



※谷一生の著書『富士子 島の怪談』のタイトルからインスピレーションを得て書いた。遭難救助の直後、現場近くの居酒屋で聞いた話をもとにしている。

夏祭り

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