2012年12月7日

リストカットやODに対する友人や家族、治療者のあり方

リストカットやODを繰り返す人は、「生きにくい世の中」という荒れた海に浮かぶ小舟に乗っている。そして、友人や家族は彼らにとっての「灯台」である。

灯台がどっしり構えていてこそ、彼らは自分の位置を知ることができる。自傷行為は、大海に漂う不安に耐え切れず、自ら海に飛び込んでしまうようなものだ。彼らのリストカットやODに直面して、灯台であるべき人たちが動揺してあちこち動こうものなら、彼らは自分たちの位置を見失ってしまい、どこにどういったらいいのか分からなくなってしまう。結果として、彼らはますます不安になり、その行動をエスカレートさせる。

治療者は灯台であると同時に、レスキュー隊でもある。位置を見失ったあげくに絶望して海へ飛び込んだ人を、溺れ死なないように救助する。ただし、彼らは舟から落ちても、ある程度は自分で泳げるようにならないといけないし、できれば自力で舟に上がれるようになるのが望ましい。彼らを毎回の自傷行為ですぐ入院させていたのでは、彼らの泳ぎが上達することはない。頻回のリストカットやODを繰り返して救急外来受診し、他科の先生から「とっとと精神科に入院させろ」という視線を感じても、敢えて見守ることが多いのはそういう理由からである。

6 件のコメント:

  1. とても参考になりました。私も同意見でこのように行動しているつもりですが、時折不安に感じることがありました。見守るという名の見捨てではないかと…。本人は何もしてくれない親に対して怒りを感じているのではないかと…。しかし、深い愛情の素の行動であるならば、いつかは分かってくれると信じます。見守ることしかできない無力さを嘆く日々は卒業。

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    1. >匿名2013年5月19日 9:59さん
      ご家族にリストカッター、それも他者巻き込み型のカッターがいると、ご家族の心労は大変なものでしょうね。診察室に来る家族を見ていてもそう思います。振り回されず、見捨てず、という姿勢を大切になさってくださいね。

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    2. ありがとうございます。本人が一番辛いだろうし、そうすることでしか逃れられない現状から、早く抜け出せるよう願うのみです。一番心配なのは、誤って深く傷つけ命にかかわる危険な状態になってしまうことです。事前にその兆候をキャッチし自傷しなくても良い様にしなければと、アンテナを張り巡らせるよう努力しています。
      ご推薦の「毒になる親」を先日購入いたしました。読み終えたら、感想を寄せますね。
      匿名ではなく名前を入れたかったのですが、どれを選択して良いのか分からず、失礼をいたしております。

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    3. >匿名2013年5月22日 15:54さん
      お名前は気になさらずに。

      あまりアンテナを張り巡らせ過ぎると、監視されているような感覚を持たれてしまうことにもなりかねないし、なによりあなたが疲弊してしまう恐れもありますので、そのあたりのバランスは気がけてくださいね。

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    4. ありがとうございます。以前そのようなことがあり、お互いに疲れ果ててしまったことも…。いろいろ試行錯誤しながらですが、少しずつ前進している感じがします。3歩進んで2歩下がるですが(笑)
      先を急がず、お互いに人生を終える時に、色々あったけど幸せだったと感じることが出来ればと思っています。しかし、今が幸せでなければ、未来も幸せではない。今この現状でも小さな幸せを見つけられる心の余裕を持てるように、どっしり構え行く所存です。これだ!という答えは無いと思っていますが、きっとこれで良かったんだと思えるように…。

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    5. >匿名2013年5月25日 17:47
      正解はないですもんね。
      一生懸命に生きる人生はらせん階段のようなもので、3歩進んで2歩下がってを繰り返すうちに、2次元で考えたら前と同じ位置に戻ったように見えても、確実に上の方に進んでいるもんじゃないのかなと思います。

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