2012年12月25日

スローカーブを、もう一球

スポーツ観戦にはあまり興味がないが、その裏にある人間ドラマは昔から好きだ。例えば、思い出すのはスキー・ジャンプの原田雅彦。1994年のリレハンメル・オリンピックで大失敗ジャンプをして団体メダルを逃した原田は、涙を見せるどころか、ヘラヘラと笑うばかりだった。テレビ画面を通して、俺はその原田の姿に興ざめしてしまった。彼の態度を冷ややかに非難する人たちもたくさんいた。それから4年後、98年の長野オリンピック。原田は137メートルという大ジャンプを成功させ、そして泣いた。大失敗をしてからの4年間、ヘラヘラと笑い続けた男が、大成功で涙を見せた。その涙に、原田の4年間が詰まっているような気がして、テレビの前で俺は鳥肌を立たせながら涙ぐんだ。

スローカーブを、もう一球 (角川文庫)
本書は、野球を中心にボクシングや棒高跳びといったスポーツも追っているノンフィクション短編集。文句なしの名作だと思う。俺のようにスポーツ観戦に興味がなくても面白いと思えるのだから、野球ファンならもっと楽しんで読めるかもしれない。

2 件のコメント:

  1. ししとう432012年12月25日 17:56

    この本では、何と言っても「江夏の21球」です。
    TVドキュメンタリーにも、複数回なったし、それがまたDVDにもなってます。

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    1. >ししとう43さん
      俺はあの短編で、江夏に声かけた衣笠の人間力が凄いと思いました。

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