2012年12月28日

デッドマン

デッドマン
トリックは素晴らしいと思うけれど、途中でちょっと先が読めたかな。それよりなにより、なんだか話運びがまだるっこしく感じてしまって……。登場人物にあまり魅力がないというか、キャラ立ちしていないというか。
ちなみに、Amazonのレビューはまずまず。

2012年12月26日

ユダの謎キリストの謎-こんなにも怖い、真実の「聖書」入門

ユダの謎キリストの謎-こんなにも怖い、真実の「聖書」入門

以前に読んだ名作『地に火を放つ者』の作者による聖書に関する本。内容は凄く面白いというほどでもない。小説のほうがかなり良かった。

<関連>
文句なしの名作なのに絶版!! 『地に火を放つ者』
キリスト教関連の小説が好きな人なら、ぜひ一度は読んで欲しい一冊。

2012年12月25日

スローカーブを、もう一球

スポーツ観戦にはあまり興味がないが、その裏にある人間ドラマは昔から好きだ。例えば、思い出すのはスキー・ジャンプの原田雅彦。1994年のリレハンメル・オリンピックで大失敗ジャンプをして団体メダルを逃した原田は、涙を見せるどころか、ヘラヘラと笑うばかりだった。テレビ画面を通して、俺はその原田の姿に興ざめしてしまった。彼の態度を冷ややかに非難する人たちもたくさんいた。それから4年後、98年の長野オリンピック。原田は137メートルという大ジャンプを成功させ、そして泣いた。大失敗をしてからの4年間、ヘラヘラと笑い続けた男が、大成功で涙を見せた。その涙に、原田の4年間が詰まっているような気がして、テレビの前で俺は鳥肌を立たせながら涙ぐんだ。

スローカーブを、もう一球 (角川文庫)
本書は、野球を中心にボクシングや棒高跳びといったスポーツも追っているノンフィクション短編集。文句なしの名作だと思う。俺のようにスポーツ観戦に興味がなくても面白いと思えるのだから、野球ファンならもっと楽しんで読めるかもしれない。

2012年12月24日

噺家侍

噺家侍
どこでどう見かけて買うことになったのか忘れてしまったが、たぶんAmazonで見つけたんだろう。実在した落語家・三遊亭圓朝が主人公の時代小説。落語が好きな人でなくても面白い、という評価だったので期待して読んだのだが、確かに落語に関してマニアックな知識を必要とすることはなかった。むしろ雑学として、へぇそうなんだ、という類の挿話が多くて、そのあたりは楽しめた。話の筋としては特に目立って面白いというところはなかった。

2012年12月22日

妖談うしろ猫-耳袋秘帖

妖談うしろ猫―耳袋秘帖 (文春文庫)
期待しすぎちゃった、というのが正直な感想。時代小説の中でも、通好みの部類に入るものなのか?

2012年12月21日

東京大学応援部物語

東京大学応援部物語

東京大学応援部を追ったノンフィクション。最相葉月のノンフィクションは『絶対音感』がなかなか面白かったので、今回も期待していた。結果はというと、うーん、確かにジンとくる場面もあったけれど、あんまり入り込めなかった。

2012年12月20日

ガレキノシタ

ガレキノシタ
私立高校の校舎が倒壊し、そこに生き埋めにされた生徒や教師たちの物語。といっても、みんなで力を合わせて生き抜くというような話ではなく、それぞれが独りか二人で閉じ込められて、お互いに語り合ったり、中にはケンカに近いようなことがあったりしながら救助を待つというストーリー。短編集だが、どれもそれなりのクオリティに達しているので読んで損した気分にはならない。

ただ、なんというか……。

伊坂幸太郎が好きな人なら面白いと思うだろうなぁ、という感想を抱き、つまりは、伊坂幸太郎にすごく似ていることなのだが、ネットで調べると確かにそういう評価も多い。著者にこだわることなく、伊坂風の小説が読みたいと思う人にはお勧め。

2012年12月19日

『怪談』 といっても、柳広司の短編小説

怪談
まぁまぁ、といった感じで、可もなく不可もない短編集。俺の中でのこの作者の評価が今回では定まらなかったので、次に読む一冊が本作程度なら以後は手に取らない可能性が高い。

2012年12月18日

トワイライト・テールズ

トワイライト・テールズ
山本弘のSF小説。怪獣小説『MM9』の世界で描かれる短編集で、ちょっと切ない感じのものが多い。俺はけっこう好きな話だった。

2012年12月11日

サイレント・クレイマーが怖い

接客業の経験があって、ちょっと中枢部に入りこんだことのある人なら、「サイレント・クレイマー」というのを知っていると思う。要するに、「文句なんか言わず、そのかわり二度と来ない人」のこと。モンスター・クレイマーは迷惑かも知れないが、クレイムは業務改善のきっかけにもなる。真摯に対応すれば、逆に顧客を増やすことにもつながる。一方、サイレント・クレイマーは、その場では文句をつけないかもしれないが、二度と来ないうえに悪評を広めまわる可能性だってある。ただのクレイムより、こっちのほうがよっぽど怖い。

クレイムをつけたうえで、その内容に釣り合わないくらいの見返りを強く要求したり、言葉づかいが恫喝まがいだったりするのがモンスターだと思う。一部のモンスターが取り沙汰されることによって、クレイムつけるのが悪いこと、恥ずかしいことという風潮ができつつあるが、全くもってそんなことはない。むしろウェルカムの場合さえある。商品やサービスに不具合があれば、その事実とそれによる不快感を伝えることは、ごくごく普通のことなのである。

2012年12月10日

朝のフルーツ

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結婚してから、フルーツを食べる機会がもの凄く増えた。数倍どころじゃない。というのも、もともと俺にはフルーツを食べる習慣が一切なかったからだ。祖父はミカン農家だったが、ミカンでさえ年間に一個食べれば多い方だった。そんな俺が、この一年半でキウイ、バナナ、オレンジ、ミカン、柿などなど、とにかく多彩なフルーツを食べているのはひとえに妻のおかげである。写真は、ある休日の朝に盛りつけられたフルーツ。

2012年12月8日

図書館に本を寄贈するロマン

本棚の都合から、この数ヶ月間で図書館に何冊寄贈しただろうか。100冊は超えていると思うが、それでも本が溢れていく……。島内に古本屋があれば良いのだが、残念ながらない。ネットでブックオフに売ることもできるが、社員として働いていた身としては、どれくらいの値段をつけられるか大体分かるし、例えばそれで2-3千円もらうくらいなら、島の図書館に寄贈することで何らかの文化貢献にでもなれば良いかなと思っている。

とは言っても、家族に読ませたい、あるいは自分の蔵書として所持し続けたいと思う本は寄贈しないわけだから、ある意味で不良在庫を引き取ってもらっている形でもある。いや、確かに読んですぐ寄贈決定する本もあるが、面白いから手元に残しておこうとしたものの、数ヶ月経って読了後用の本棚が埋まりだして、「やっぱりこれは寄贈で良いか」と押し出される本もたくさんあるので、寄贈する本のすべてが面白くないわけではない。それに、本の趣味というのは十人十色なので、俺が面白くないと思って寄贈した本で胸打たれて人生が変わったという人が出てこないとも限らない。そんな愚にもつかないロマンを抱けるのが図書館への寄贈なのだ。

2012年12月7日

リストカットやODに対する友人や家族、治療者のあり方

リストカットやODを繰り返す人は、「生きにくい世の中」という荒れた海に浮かぶ小舟に乗っている。そして、友人や家族は彼らにとっての「灯台」である。

灯台がどっしり構えていてこそ、彼らは自分の位置を知ることができる。自傷行為は、大海に漂う不安に耐え切れず、自ら海に飛び込んでしまうようなものだ。彼らのリストカットやODに直面して、灯台であるべき人たちが動揺してあちこち動こうものなら、彼らは自分たちの位置を見失ってしまい、どこにどういったらいいのか分からなくなってしまう。結果として、彼らはますます不安になり、その行動をエスカレートさせる。

治療者は灯台であると同時に、レスキュー隊でもある。位置を見失ったあげくに絶望して海へ飛び込んだ人を、溺れ死なないように救助する。ただし、彼らは舟から落ちても、ある程度は自分で泳げるようにならないといけないし、できれば自力で舟に上がれるようになるのが望ましい。彼らを毎回の自傷行為ですぐ入院させていたのでは、彼らの泳ぎが上達することはない。頻回のリストカットやODを繰り返して救急外来受診し、他科の先生から「とっとと精神科に入院させろ」という視線を感じても、敢えて見守ることが多いのはそういう理由からである。

2012年12月5日

子育てに必要なことはすべてアニメのパパに教わった

子育てに必要なことはすべてアニメのパパに教わった

図書館で借りた本。値段にしては分量がなく、あっという間に読み終えてしまうので、買うのはちょっともったいないかもしれない。内容は悪くないと思う。ただ、知らないアニメもいくつかあって、そのあたりは大雑把にしか読んでいない。図書館にあれば読んでみても良いんじゃないかな、という本。

2012年12月4日

怪獣記

怪獣記 (講談社文庫)
未確認不思議動物はいるのか!? 思えば子どもの頃はこういうオカルトが大好きで本だって何冊も読んだ。大人になるに従って、オカルト系や怪談話を興味の対象というより、飲み会やキャンプで場を盛り上げるためのツールとして集めるようになってしまった。そんな俺とは対照的に、大人になってもなお好奇心を失わない人たちがいて、中でもこの高野秀行は行動力と文章力が秀でているのでついつい何冊も読んでしまう。

今回はトルコの湖に生息するというジャナワールなる生物を探す10日間の旅。相変わらず文章が面白く、周りで巻き起こる珍事が滑稽に描かれていて、飽きずに最後まで読めた。高野ワールドはやっぱり素敵だ。

お勧めである。

2012年12月3日

降臨の群れ

降臨の群れ (上) (集英社文庫)

インドネシアのアンボン島を舞台に、イスラム教とプロテスタントの信者同士が対立し、殺し合い、憎しみを深めていく物語。冒険小説という感じでもなく淡々と進むわりには面白かった。ただ、これは図書館へ寄付。

※読んだ本で、子どもや家族に読ませたい、あるいは蔵書として持ち続けたいものは本棚に残し、そうでないものは島の図書館へ寄付するようにしている。

笹子トンネル崩壊をうけて、酸素濃度について調べてみた

トンネル内で火災発生との情報があったので、人間が生存するための酸素濃度について調べていたら、Wipikediaに書いてあった内容に唸ってしまった。

小学校で習うように、火が燃えると酸素が消費される。大気中の酸素は21%である。人間は、酸素16%以下の空気を吸うと、酸素濃度の勾配に従って、酸素が血管から肺外に引っ張り出されてしまう。つまり、極端な話をすると、酸素10%の空気を呼吸することは「10%酸素がある」というわけではなく、「酸素を6%奪う」空気を吸っているということになるのだ。

2012年12月2日

酔いつぶれてしまった友人の背中に丸文字で落書きした話

「浮気しちゃぃやョ!! カォリ」

五年前、酔いつぶれてしまった友人の背中に丸文字で落書きした。仲間5人で爆笑しながら、彼の背中の写真を撮った。それから数日後、友人は彼女と非常に険悪になった。彼女は背中の落書きについて、彼を問い詰めてはいないようだった。女のプライド、だろうか。冷たくなった彼女の態度に、理由が分からず悩む彼。俺たちは、落書きのことを言いだせなかった。

さらに数日後、友人は彼女と別れるかもしれないと言いだした。彼は、彼女の不機嫌の理由を知らない。この状態になって、俺たちも動揺し始めた。三年近く付き合ってきた二人。彼らを破局に導こうとしているのは、俺たちの悪ふざけの落書きだ、多分。いや、多分じゃないか。

数週間後、合コンざんまいの彼がいた。半ばヤケッパチに遊びまくる彼を見て、俺たちは胸を痛めた。合コンで酔いつぶれた彼の背中に、
「ゴメンよ」 「許してくれ」 「すまん」 「申し訳ない」 「カォリ」
と寄せ書きをした。そして、やはり、爆笑しながら写真を撮った。毎度、このグループは悪のりが過ぎるのだ。もちろん、彼がその落書きに気づくことはなかった。

数ヶ月後、元彼女は、やはり耐えきれなかったのだろうか。久しぶりに彼に連絡をとってきて、「カオリって誰よ」と彼を問い詰めたらしい。その時になって、彼は初めて俺たちのイタズラを知ったのだった。だが、彼は俺たちに対して怒らなかった。彼女に対しても、一切の言い訳をしなかったようだ。気持ちのいい男なのだ、彼は。

五年後、つまりつい最近、彼と彼女から結婚式の招待状が届いた。結婚式に参加した俺たち悪い友人五名。披露宴での出し物は、誰が言いだすともなく決まっていた。フンドシ姿にTシャツでステージに上がる俺たち。一気にTシャツを脱ぎ捨てて、新郎新婦に背中を向けた。背中には、お互いにマジックでデカデカと書いた、

「お」 「め」 「で」 「と」 「う」

会場で一人、彼だけが大爆笑。不思議顔の新婦に、彼が顔を寄せて何か話していた。彼女はみるみるうちに泣き出して、それから笑いだして、半泣き半笑い。きょとんとしている出席者たち。新婦が、笑ったり泣いたりしながら、ステージまでやって来た。それから、一発ずつ、全員ビンタされた。落書き事件から五年目にして、俺たちの罪は洗い流されたのだ。

「奥さん、別れてください。 カオリ」
数時間後、二次会で酔いつぶれた新郎の背中を優しく見守る俺たちがいた。

2012年12月1日

影と遊ぶ

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影。

これは考えてみると非常に面白い。影は「ある」ように見えるけれども、実際には光が当たる部分にこそ光の要素が「ある」のだ。影の部分は光が欠けたところであって、そういう意味では本当は「ない」部分。その「ない」部分である影をどう撮るかで、写真の雰囲気はガラッと変わる。

面白いと思わない?