2012年10月31日

ある電力会社の新入社員が抱える憂うつと鬱憤

先日、東京の某一流私大を卒業した後、電力会社に就職して一年目の男性と話すことができた。今けっこう大変じゃないのかと聞いてみると、いろいろと憂うつになることや鬱憤のたまるようなことがあるようだ。

例えば、飲み会などで社名を出さないのはもちろんのこと、スーツにつけている社章も外す。そこまで気をつけて飲んでいても、ふとした拍子にバレてしまうことがあり、そういう時には無関係の酔客からからまれることもある。会社に内定した後で震災から原発問題に至る問題が発生してしまい、高かったモチベーションに憂うつという陰がさしている。

さて、ここまで原発が社会問題になっているのだから会社内がピリピリしているかというとそうでもないらしい。
「現場は緊張感があるのに、上層部や中間管理職あたりが気楽に構えているとか?」
「いや……、もっと近い層の、ほんの少し上の先輩たちでさえ危機感がありません。そういう姿を見ていると……、なんというか、憤りというか……」
会社内に「嵐が過ぎるのを待とう」「国民も喉元過ぎれば忘れるさ」といった空気が漂っていて、それが入社したばかりで意気たぎる彼には腹立たしいようだ。

そうは言っても、入社してまだ一年にも満たない彼が先輩や上司にもの申すなんてことは無理なわけで、複雑な表情で現状を語る彼の姿が印象に残った。

泥まみれの死

泥まみれの死

沢田教一の文庫版写真集。沢田がどのような写真を遺したかは、グーグル検索で見るのが早い。

2012年10月30日

ライカでグッドバイ―カメラマン沢田教一が撃たれた日

ライカでグッドバイ―カメラマン沢田教一が撃たれた日

カメラマン沢田教一の足跡をたどった本。20歳の頃、フォトジャーナリストになりたいと思っていたが、沢田のような動物的な勘や瞬発力、度胸などが足りなさすぎることがよく分かった。中古本しかないんだね。

ゲームセンター

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2012年10月29日

灯篭祭り

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2012年10月28日

メガネを買った

運転中にしかかけないけれど、メガネを新調した。今のメガネは薄い傷がたくさんあるせいか、夜間の運転で対向車のライトが乱反射して見にくくて危ない。

トイレの間違った使い方

デパートで入ったトイレに貼ってあった。皆さん、こういう使い方はしないように(笑)

2012年10月25日

清原のプロ野球解説が面白い

先日、ラジオで清原和博がプロ野球解説をしていた。ほんの十数分聞いただけなのだが、これがなかなか刺激的で面白かった。

クライマックス・シリーズのライオンズ対ホークス戦で、ホークスの攻撃の時に打者がデッドボールを受けた。その裏、ライオンズの攻撃で、デッドボールぎりぎり(デッドボールだったかな?)の球を投げたホークスのピッチャーについて、清原、

「これ、さっきのデッドボールの復讐ですね」

これに対して実況アナウンサー、

「なるほど……、清原さんの解説は独特ですねぇ」

ちょっとはぐらかす感じで答えるが、清原は追い込む。

「いや、あれは完全に復讐ですよ」

「……、そうですか。ところで」

と話題を変えるアナウンサー。その後も、ライオンズの打者が見送った球がストライク判定を受けた時に、清原、

「あれ、完全にボールですよ」

「はい」

「あれストライクって言われたら、バッターは打つ球ありませんって」

「はい……」

十数分の間、完全にライオンズびいきの解説ではあったが、歯に衣着せないサッパリとした解説で聞いていて面白かった。もともとメディア露出の多い人だったから、けっこう慣れているんだろうな。

止まれ!!

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2012年10月24日

ダンボー・ブラザーズとアヒル三兄弟

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「おい、あいつら止めろ」
「へいっ!! 待て待てぇ」

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「いや、おい、待てって」

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「あ……、待って」

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「すいません」
「……、よし、追いかけるぞ!」

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「アニキ、どうします、コイツ!?」
「餌付けしてみるか」

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「へへっ、こいつら案外かわいいっすね」

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「……おぃ」

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「……おぃ」

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「へっ?」

ルポ 児童虐待

ルポ 児童虐待
ちょっと前までは、虐待のニュースを見るたびに、 「なんだこのバカな鬼親と周りの無能どもは」なんて思っいたのだが、実際にはそんなに底は浅くない。 当たり前だが、いろいろなケースがある。 どうやったら虐待を減らせるか、またどのように子どもや親をサポートしていくか、他人事ではなく考えておかないといけない。精神科医としても、親としても。

虐待関係の本は何冊か読んだけれど、この本は虐待する親の苦悩という部分にも目を向けていて、親となった今の俺には胸に響く本だった。

<関連>
「愛されたい」を拒絶される子どもたち―虐待ケアへの挑戦
殺さないで―児童虐待という犯罪
「自己責任」の使い方に絶句した話
オッパイとドパミンと産後うつ

2012年10月23日

週刊朝日の謝罪態度がひどい

「23日発売の同誌を、週刊朝日側が何のコメントも付けずに大阪市役所に送りつけてきた」
これが額面通りに、そのまま事実だとしたら、この謝罪の仕方はあまりにも常識ハズレだ。「謝り方も知らない」と言われるのも当然だ。橋下市長のこの怒り方からすると、きっと本当にただ雑誌だけ送ったのだろう。そしてそれは「送りつけ」という表現がぴったりの行為だ。もしかすると、謝罪文のページに付箋くらい貼ってあったかもしれないが、それだとますます癇に障りそうだ。

普通、こういう場合には、雑誌を送るだけでなく、謝罪文を同封し、可能であれば直接に面会して、あるいはせめて電話ででも謝罪するのが常識だ。面会や電話までは求めすぎかもしれないが、それでも少なくとも謝罪文くらいは同封するものだ。

「この度は弊社の記事で大変にご不快にさせたこと、心から謝罪申し上げます。○○ページから橋本市長あてに謝罪文を掲載しておりますのでご確認ください。今後このようなことのないよう云々……、ご指導ご鞭撻云々……」
これくらいのことが書けなくて、よく出版社などやっているものだ。
橋下市長、週刊朝日の謝罪態度に激怒 「謝り方も知らない。鬼畜集団だ」
10月22日(月)  
「週刊朝日」が報じた自身の出自に関する記事をめぐり、同誌と全面戦争となっている日本維新の会代表の橋下徹大阪市長が22日、自身のツイッターで「朝日新聞出版と週刊朝日は鬼畜集団」「週刊朝日の体質は矯正不可能」などと激しい言葉で怒りを爆発させた。この日、23日発売の最新号(11月2日号)同誌に掲載される謝罪文の内容が明らかとなったことを受けての発言。
  “謝罪文”は、河畠大四編集長名で見開き2ページにわたり掲載されることが判明したが、橋下市長は、23日発売の同誌を、週刊朝日側が何のコメントも付けずに大阪市役所に送りつけてきたことを“暴露”し、激怒。「もうね、朝日新聞出版と週刊朝日は鬼畜集団ですよ。こやつらの先祖はどれだけ立派なのかは知りませんが、謝り方の礼儀すら知らない。人間足り得るイロハのイの字も知らない。朝日新聞グループは、いったいどんな社員研修をやっているんだ?人の先祖を否定する前に、自分ところの社員を人間に育てろ!」と非難した。  
さらに怒りを増幅させたのが、「現物(出自記事の掲載紙)を僕の母親に送り付けて、話を聞きたいと書面通知。僕の母親が取り乱す姿を記事にする企画」とだったことも明かした。  
ツイッターでは怒りの噴火は収まるところを知らず、「(週刊朝日の)謝罪が本当かどうかは皆さんに知ってもらわなければなりません」と、今後も記者会見やツイッターで非難を続ける考えを示した。  
問題となった記事は、ノンフィクション作家の佐野眞一氏と取材班が先週発売の10月26日号から始めた連載「ハシシタ 奴の本性」。橋下氏は、特定地域を「被差別部落」と名指しし、橋下氏の人格否定につなげていると抗議し、発行元の親会社である朝日新聞の取材を拒否。週刊朝日は19日、連載打ち切りを決めた。
なお、毎日新聞では、
市によると、同誌を発行する朝日新聞出版の社員が22日に市職員に手渡したという。
となっている。いずれにしても情けない謝罪(?)の仕方だ。

橋下市長:週刊朝日は「謝り方も知らない鬼畜集団」

仲間はずれを探せ!!

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キリンさん、ちーっす!!

夏の災厄

夏の災厄
わりとリアルなウイルス・パニック小説。患者が何万人も大発生するような終末世界という感じではなく、埼玉県昭川市という人口8万6千人の架空の街を中心とした感染症で、ハリウッドのパニック映画みたいに発症者がべらぼうに多いわけではない。行政の中の人たちのパニックぶりが見事に描かれていた。登場人物も典型的ヒーローやダークヒーロー、悪役がいるわけでもなく、どこか人間臭い人たちが織りなす群像劇で、ちょっと長いけれどそれなりに読めた。

2012年10月22日

落ちた花びら

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2012年10月21日

Smoking

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2012年10月19日

昨日は飲み会で……

昨日は病棟の大運動会で、真っ赤なドレスを着て女装した。二人三脚リレーにも参加し、なかなかに楽しい運動会だった。

夜は打ち上げと称した飲み会で……、一次会で帰りたかったのに二次会まで拉致され……、

「先生、帰りますよ」

と起こされ、

「ずっと寝てましたよ」

と笑われ……。


だから帰るって言ったのに!!



今日は昼から母と祖母が島に遊びにくるので、午後は年休をもらって早退する。家族みんなでサクラの定期健診に行く予定。サクラの成長ぶりを見せるのが楽しみだ。

2012年10月18日

これぞ狂気! 『封印されたアダルトビデオ』


俺はアダルト・ビデオを客として借りたことがない。「客として」というのは、経済学部生時代にビデオレンタル店でバイトしていて、営業時間が終了してからアダルトビデオを一、二本借りて帰っていたからだ。当時はまだVHSの時代で、バッグの中でビデオがかさばっていたことを思い出す。

それはともかく、本書である。なぜかAmazonで見つけてしまい、思わず買ってしまった。内容は面白いが、文章量は多くなくわりと短時間に読み終える。

封印されたAVが、その理由とともに紹介されている。封印されているので、当然観ることはできない、はずだ。著者がAV関係者を辿って観ることができたものもあるが、そうでないものもある。なかなか刺激的な話も多いが、読後感は決して良くない。いくつか紹介しよう。

「封印」といってまず思い浮かべるのが、呪い系だ。『封印された死者追悼AV』というものがあるのだが、その内容が非常に過激、というか罰あたりで、呪われて当然である。このAVのタイトルは『死ぬほどセックスしてみたかった。』で、1995年のもの。1994年、20歳のAV女優・大崎ひとみが、地元の群馬県で交通事故死した。そこで、AV監督のバクシーシ山下が、追悼ドキュメンタリーAVを撮ろうと思い立つ。その内容が凄まじい。撮影前、バクシーシ山下は言う。
「大崎さんは生きる喜び、SMを知らずに死んだ。今回の観念(註:AV男優でM専門の観念絵夢のこと)の役割は、そんな大崎さんにSMを教えてやることだ」
観念は最初意味が分からなかったが、詳細を知って衝撃を受ける。なんと、SMの対象が大崎さんの墓だったからだ。墓に到着して皆が気づくのだが、大崎さんの墓には大崎家先祖代々の人も眠っていた。しかし、監督の、
「うーん、仕方ないのかな」
という一言で撮影開始。豚肉の血を墓の上に垂らし、墓石を縄でグルグル巻いて縛りつけ、鞭で打ち、ロウソクも垂らす。観念絵夢もSM女優からムチで打たれながら叫んだ。
「どうだい、大崎さん! SMって、こんなに気持ちのいいもんなんだよ!」
狂気である。さてこの撮影の後どういうことが起こったか。それは敢えて詳しくは書くまい。知りたい人は本屋か図書館か、あるいは上記リンクから購入を。まぁ、呪われて当たり前だという気もするが、監督のバクシーシ山下は健在のようだ。

このバクシーシ山下、人肉を食べるAVも撮っていて、これも封印されている。この人肉とは、男優・観念絵夢の包茎を切除した皮と、AV女優の脂肪吸引した脂肪。どちらも想像しただけで吐き気がしそうなもので、バクシーシ山下の狂気っぷりが感じられる。しかし、言っていることには共感できるから不思議だ。彼はこう言う。
「まあ、セックス自体がタブーなわけじゃないですか。それがAVというカテゴリーの中に入ってしまうと、全然タブー感がない。それが麻痺しちゃうのが嫌だなっていうので、これもどうだ、あれもどうだ、みたいなところはありましたね。何かしら歪んだ部分を歪んだものとして考えないでいる人たちに対しての物言いかもしれませんね。セックスを映すのがOK。うんこを食べることすらOK。なら、人肉を食べてもOKだよね? そう思ってしまうんですよね。全部アブノーマルじゃないですか」
タブーへの挑戦は、歪んだものを歪んでいると認識できない人々へのメッセージ。
なんだか凄く良いことを言っているようなのに、そこはかとなくネジの緩みを感じさせる、まさにキワモノなAV監督だ。

『ハンディキャップをぶっとばせ』というアダルトビデオも封印されている。1994年の作品で、障害者男優を募集して撮られたもの。3人の男性が選ばれ、うち一人が手足が不自由なWさんだった。
「養護学校に入りました。そこでは、エッチな話とかすると、『やらしい』と言われて非難されました。セックスのことを考えるのはいけないことだと思いました。でも、興味があるので、AVや裏ビデオとかにはまりました」
障害者にとって女性と接することがいかにハードルが高いものであるか。その話からうかがい知ることができる。
Wさんは悶々とした日々を過ごしていた。このまま一生、女性と触れあうこともできず、童貞のまま過ごすのかと考えると、絶望的な気分に襲われる。
そんなとき、彼は「障害者男優募集」を見つけたのだ。
これだ! 彼は躊躇することなく募集の連絡先に電話をかけた。そして採用が決まり、念願の性行為の夢がかなうことになった。
他の男優は小人症と盲目の人。内容はAVというよりドキュメンタリーである、と著者は言う。セックスシーンはあるけれど、ヌキどころ(女性でも意味は分かるよね)がないのだ。実際、ビデオの中にはこんなナレーションが入っている。
「彼らは性をいやらしいことだと隠蔽してしまう社会の犠牲者です」
「厄介なのは、無意識の差別だと思います。身障者を差別していますと公言している人はいないと思います」
素晴らしい作品だと思うが、ビデ倫ではダメだと言われた。監督はビデ倫とケンカしつつ、出演した障害者男性陣に対してはこんな感想も持っている。
「出演する障害者の方々には、通常の男優さんとして出演してもらおうと思ったんですよ。ギャラを受け取ってビデオに映る限り、もう男優さんですからね。でも、本人たちは、女優を前にすると、もう仕事する気がなくなって、女、女、女って、コントロールができないんですよね。それから、彼らには甘えがあったんです。普段、彼らは、周囲からお世話されているんですよ。ですから、何でもかんでも自分のわがままが通ってしまうと思っていたんです」
この撮影を通じて、安達(監督)は痛切に感じた。健常者と障害者は、お互いに「差別している」「差別されている」という事実を認識しなければ付き合えないのではないかと。
そうそう、最後にレイプもののAVを撮影する時によりリアルにするためバクシーシ山下がとった手法も書いてあって、思わず「なるほど!」と感心してしまった。 どういった内容だったのか、それはやっぱり本屋か図書館か(さすがに置いてないかw)、いや、やっぱり上記のリンクから買ってもらうのが一番良い(←重要)。

アダルトビデオ愛好家なら、一度は目を通しておいて損はない一冊!!(※俺はネットの無料動画派)

<関連>
セックスレスキュー
職業としてのAV女優
デフレ化するセックス

ニョロニョロ

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2012年10月17日

とどめ ~あるイジメの結末~

最後にアイツを蹴ったのはリュウイチだった。リュウイチが頭を蹴った時、パキンとグシャが同時に鳴ったような、そんなイヤな音がした。そのあと、ケンジが倒れているアイツの顔を殴っても、アイツは痛がりもしなかった。目すら閉じなかった。だから、アイツにとどめを刺したのは、リュウイチのはずだ。

今回のお仕置きで、途中から武器を使い始めたのはケンジだった。ケンジは落ちていた鉄の棒で、アイツを叩きまくっていた。最初は腕とか背中、それから太もも、スネ、股間、興奮してきたケンジは首や顔や頭も突いて叩いた。叩くたびに、痛そうな音がしていた。

「ヤバいかも」
一番最初に顔を殴ったヒロシが、アイツが動かなくなって動揺したのか、声を震わせて泣き出した。メソメソしているヒロシの頭をケンジが叩いた。パシンという音は、それまでアイツが受けていた攻撃音と比べるとやけに軽かったけれど、それでもヒロシはますます強く泣いた。

「橋から落ちたことにしようか」
と言い出したのは、一番ひどく殴ったり蹴ったりしていたマサヤだった。マサヤは、皆で口裏を合わせればバレないさ、と言った。
「それイイネェ」
リュウイチとケンジは勢いよく賛成した。ヒロシはただただ泣いていた。口裏合わせを提案したマサヤは得意げだった。

アイツは死んじゃった。
最初に顔を殴ったのはヒロシ。
最後に頭を蹴ったのはリュウイチ。
散々殴って蹴ったのはマサヤ。
鉄の棒なんか使ったのはケンジ。

こいつら、皆、どうかしている。ハッキリ言ってバカなんだ。手加減というものを知らない。いくらアイツがムカつくからって。バレたら、こいつら皆、有罪だろうな。僕は、ほとんど見ていただけ。二回か三回、アイツのスネを蹴っただけ。

マサヤがニキビ面を歪めてニヤつきながら、僕を見た。
「言い出しっぺのお前が、本当は一番悪いんだぜ」
ケンジもリュウイチも僕を見て、そうだそうだと言った。ヒロシでさえ、泣くのをやめて僕を見ていた。その目は、なんだか僕を非難しているようだった。

だから、バカは嫌いなんだ。
お前ら、全員死ねば良い。
お前らも、死んでしまえ。

僕は、高校受験の勉強計画を練りながら、目の前のバカたちを呪い続けた。

海辺の決闘

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23歳の時、ハワイにて。

2012年10月16日

世にも奇妙な人体実験の歴史


もの凄く面白かった。目次からもある程度その面白さが伝わると思うので、ぜひamazonの『なか身検索』でチェックしてみて欲しい。

本書に出てくるほとんどの科学者が、一歩間違えば人体実験を行なう非道なマッド・サイエンティストなのだが、その人体実験の被験者が自分、つまり『自己実験』というところが凄い。

ハンフリー・デービー(アルカリ金属やアルカリ土類金属をいくつか発見したことで知られ、塩素やヨウ素の性質を研究したことでも知られているらしい)の実験風景など、思わず笑ってしまう。かつて一酸化炭素が健康に良いと信じられていた時代があった。吸入すると頬が紅潮するからそう誤解されていたようだ(一酸化炭素中毒で死亡した人の顔は青白くない)。当時21歳のデービーは、このことに疑問を持ち、自己実験を行なった。
彼はさまざまな種類の気体を自分で吸入し、試してみた。一酸化炭素を吸入したときには、「死の淵へと引きずり込まれる」ところだった。「私には、口を開けてマウスピースを落とす力しか残っていなかった。……私は3回吸入したが、あと1-2回多く吸入していたら即死していただろう」と彼は述べている。すぐに純粋な酸素を吸入したため、彼は一命を取り留めた。恐怖によって彼の熱意に歯止めがかかることはなかった。一週間後には揮発性溶剤を吸いこんで喉頭蓋を火傷し、窒息しかけた。こうした危険な実験のあいだ、このままでは死んでしまうと思ったときでさえ、彼は冷静に自分で脈を測っていた。
デービーの同僚たちは、翌朝彼が生きている姿を見てはほっとしたものだった。
本書の著者トレヴァー・ノートンは、ちょいちょい皮肉のきいたジョークを入れこんできて、それがまた面白い。エーテル麻酔の発明者である歯科医ウィリアム・モートンに関するエピソード。
エーテルの効果を人間に試す前に、まず使い捨てできるもので試してみようと思ったノートンは、妻のペットのイヌと金魚を実験台に選んだ。イヌと金魚はかろうじて死なずに済み、彼もかろうじて離婚されずに済んだ。
さまざまなものを食べられるかどうか試したフランク・バックランドに関する一節。
フランクはまるで百科事典のような味覚の持ち主だった。「殉教者の鮮血」が出現するという奇跡を調査するため、ある教会を訪れた時のことである。教会の床には、本当に染みが点々とついていた。彼は染みの一つを舐め、一言、「コウモリの小便だ」と言った。コウモリの小便を他の何者かの(たとえば、ネズミや司祭の)それと区別できるとは、いったい何種類のサンプルの味見をしたことがあったのだろう。
医学関連が多い本書の中でも印象に残ったのが、人への心臓カテーテルを初めて達成したヴェルナー・フォルスマンだ。彼は、首からカテーテルを挿入された馬の絵を見たことがあった。それを応用して人間の心臓内部を探れるのではないかと考えたのだ。そこで上司に申請するが、患者を使って試すことにも、それから自分を使うことも許可されなかった。そこで彼は仲の良い看護師に協力を頼んだ。
二人は昼休み中にこっそり手術室に入った。フォルスマンは腕の血管を切開し、そこからゆっくりと長さ65センチのカテーテルを挿入し、心臓へ向かってスライドさせた。二人はレントゲン室へ移動し、そこで彼は鏡を見ながらカテーテルを心臓まで導いていった。レントゲン技師が、心臓に向かってフォルスマンの体内を不気味に這い回るカテーテルのX線写真を撮影した。
この実験結果は1929年に発表されて大騒ぎとなり、フォルスマンは病院をクビになる。それから27年後になってようやく功績が認められてノーベル賞を受賞した。ちなみに、自己実験を行なった1929年当時、フォルスマンは大学を卒業したばかりの25歳。今で言えば、研修医である。

その他、海にほとんど荷物を持って行かずに漂流して、どれくらい生き長らえるかを自己実験したアラン・ボンバールの話は、なんだか凄く胸を打たれた。彼の漂流記は本にもなっている。これも面白そうだが、かなり古い本しかないので入手が躊躇われる。

理系文系問わずに楽しめる実にお勧めの本。

はたらく女たち

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2012年10月15日

みまもる

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2012年10月14日

肩車

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「また来ようね」
まだ若かった父の肩の上で、景色が右に左に振れていた。落っこちないよう、父の頭にしがみつく。
「あぁ、また来よう」
野太い声が、お尻の下で響いた。
「来年は、肩車できるかなぁ」
母がコロコロと笑いながら言った。
「そんな簡単に弱らねぇよ、俺は」
父がゆっさゆっさと僕を揺らした。あの時の僕は、上下左右に揺れ動く世界を見ながら、決して揺るがない安心感に満たされていた。


(近所の祭り帰り、素敵な親子をスナップ)

2012年10月13日

ピアノにシール

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甥っ子の練習用に貼ってあるんだと思う。

2012年10月12日

鍵穴

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フリーランチの時代

フリーランチの時代
小川一水のSF短編集。『老ヴォールの惑星』が秀逸すぎて、どうしてもそちらと比較してしまうが、ちょっとパンチが弱かった。ただ非常に読みやすくはある。

2012年10月11日

くちびるに歌を

くちびるに歌を
面白かった! けれど、オチは読めた。長崎県の五島列島にある全校生徒150人の小さな中学校(俺の出身中学校は全校生徒80人だったけれど……)、そこの合唱部が舞台の物語。合唱部に所属する合掌大好き女子・ナズナと、存在感がサランラップなみに薄くて透明でひょんなことから合唱部に入部することになった男子・桑原の視点を交互に行ったり来たりして描かれる青春小説。カバーイラストを見ながら、「これは辻エリだな」とか「三田村リクはコイツだろ」とか予想するのも楽しかった。

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2012年10月10日

海を眺める老人

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15年前のハワイ、ワイキキビーチにて。

老ヴォールの惑星

老ヴォールの惑星
4つのSF短編から成る本。とんでもなく面白かった。特に最後の『漂った男』のラストは鳥肌が立つほど素晴らしかった。ちなみに作者の小川一水は1975年生まれで俺と同じ歳。お勧め。

恋のファインプレー

大学に入って半年ちょっと。 
俺は男女混合の仲良しグループで集まり、安い居酒屋で飲んでいた。メンバーは七人。男四人、女三人。そんなグループが仲良しなだけで終わるわけがなく、誰それと誰それは付き合いそうだとか、どうやらキスをしたようだとか、そういった話題は、当人たち以外で集まる時の話題になっていた。

さてそのグループの中に、アヤという女の子がいた。アヤは、中学時代にソフトボール部でキャチャーをしていたらしく、そのためか骨太で肉付きも良くて、おまけに性格もサバサバしていて、女の子らしい女性が好きな俺からしたら、ストライクゾーンからは大きく外れたヤツだった。

飲み会の話に戻る。まだビールが好きじゃなかった俺は、モスコミュールを頼んだ。安い居酒屋のモスコミュールは、たいてい美味しくない。ところが、その居酒屋のモスコは意外に良い味をしていた。俺は思わず、
「あ、うめっ」
と言った。誰も興味を示さない中で、アヤだけが食いついてきて、 
「マジで? 飲みたい飲みたい」
と言い出した。俺は、基本的に間接キスが苦手だ。男同士では、絶対にまわし飲みをしないし、女の子相手でも物凄く抵抗がある。しかし、まわし飲みがキライだとも言えず、アヤにモスコを差し出した。アヤは、普段と変わらない雰囲気のまま、
「どこ飲んだ?」
と聞いてきた。俺は、一瞬意味が分からなかったが、要するに、俺と間接キスをしないために聞いたのだと気付き、
「あ、そこ。ほら、ちょっとくもってるとこ」
と答えると、アヤは俺が何か言う間もなく、そのくもった部分を自分の口にあてて、グビグビと、モスコを飲んだ。

飲み会の帰り道。なぜか、アヤと二人きりになってしまった。
「わたしのサイン、分かった~?」
アヤが、舌のまわらない酒臭い息でからんできた。
「いや……、分かるもなにも」
そう答えると、アヤは正気にかえったのか、
「あ、そっか」
そう答えて、なんとなく寂しそうに離れていった。その姿が、なぜだろう、なんとなく、可愛かった。あれ……、ストライクゾーンから外れているのに……、俺ってもしかして悪球打ち? 
「お前さ、キャッチャーなのにサイン出すの下手過ぎ」
俺が笑いながらそう言うと、アヤは、
「基本、ピッチャーまかせだから」
そう言いながら、はにかんだ。俺も酔っていたのか、その、はにかんだ感じがたまらなかった。アヤと付き合ってみるのも良いかもしれない。
「二人でバッテリーでも組んでみるか?」
アヤは、
「ん? どゆ意味?」
キョトンとした顔でそう答えた。
「あぁ……、お前さ、サインは出すのも受けるのも下手なのね」
俺はそう言いながら、キュッとアヤを抱きしめた。
「ナイスキャッチ」
耳元で、アヤがささやいた。

2012年10月9日

ニコちゃん給水塔

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妻の実家近くにある保育園の給水塔。

メモリークエスト

メモリークエスト
面白かった!! 高野秀行の本は3冊読んだがハズレがない。

旅エッセイなので、読み手を選ぶ可能性もあるけれど、ぜひ一度は高野ワールドを堪能して欲しい。お勧め。

2012年10月8日

光りの侵入者たち

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象られた力

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うーん……。amazon評価は非常に高い。しかし、この評価が落とし穴だった。SF好きか、この作家のファンにしてみれば、とても面白く感じられるのかもしれないが、ごくフツーの読者である俺からすると、なんだかなぁ……、という感じ。amazonでの本の評価は、ある人が「一定の時間を割いて読んだ」という時点で、ちょっとしたバイアスがかかることになる。例えば、評価がもの凄く高い歴史小説があったとしても、その評価はわざわざ歴史小説を入手して読むような歴史小説好きな人たちの意見がほとんどなわけで、それが普段は歴史小説を読まない読者にも面白いかどうかは分からないということ。

だから、本書はお勧めしない。

2012年10月7日

バイオリズム

俺にしては柄にもなく、バイオリズムというのを半分くらい信じているところがある。ずいぶん前に聞いた、

『誕生日の月が最も体調が良く、その反対、つまり6ヶ月後が最も調子が悪いパターンが多い』

というのを自分に当てはめて納得したからだろうと思う。5月生まれの俺は、秋がちょっとだるい。日の出は遅いし、温度も冷え込んでいくし、頭も体もシャキっとしない。春も秋も気温と湿度は似たようなものだが、そういう理由で俺は春のほうが断然好きだ。また、秋を過ぎて冬になるとだんだんと上向いて元気になっていく。こんな俺に対して、妻は秋が大好きで、春よりも秋のほうが体調が良いそうだ。そんな妻の誕生日は10月である。

他の人にも、こういう季節ごとの得意不得意というのはあるのだろうか。

ビールケース

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三匹のおっさん

三匹のおっさん
気軽に楽しめた。『ズッコケ三人組』に還暦を迎えさせたような、そんなバランスのとれた三人のオッサンたちによる事件解決もの。続編も出ているようなので、文庫化されたら買ってみよう。

2012年10月6日

ホーム

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白い部屋で月の歌を

白い部屋で月の歌を
面白かった……。短編が二つ、120ページくらいと170ページくらいで構成されている。どちらもホラー小説として秀逸だったと思う。もともと「ですます調」の小説は好きじゃないのだが、表題作でもある『白い部屋で月の歌を』は、この語調が非常に合っていたように感じる。これはなかなか掘り出し物のお勧め品。

2012年10月5日

雨降り歩道

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ご機嫌の法則100

ご機嫌の法則100
1000円も出して買うほどの中身はない気がする。俺は古本で100円で買った。

特に気に入ったものを一つ。
きみが死んでも、世界は変わらない。
でも、きみが生きていれば、世界はきっと変わっていく。