2012年6月20日

素人に毛を生やす

医学生が教科書で学ぶことは、臨床の場に出てみると無意味なことが多い。医師国家試験を通ったと言っても、所詮は一般人に毛が生えた程度に過ぎない。しかし、その一本の毛があるかないかで大きく違うのも事実。

これは、後輩小児科医が尊敬する教授の言葉である。つい最近、高校時代の恩師で今は友人付き合いをしている先生と、後輩小児科医との三人で話をする機会があった。精神科関連の話題に話が及んだ時に、先生が何度となく「素人判断でしかないけれど」と前置きしてから話し始めるので、
「精神科医だって、判断とか感覚とかについて言うなら素人にちょっと毛の生えた程度ですよ。そりゃもちろん精神科に関する知識は他の人より多いし、患者さんをみる時の考え方も身についてはいるけれど」
というようなことを俺が言った。それに対して先生が言う。
「どんな仕事でも、門外漢は“毛の生えた程度”の差を埋められないものだ」
これを受けて後輩が返す。
「俺はまだ産毛しか生えてませんが」
さらに、また先生が答える。
「その産毛の差が凄いのだ」
そこで後輩が思いだしたのが冒頭の教授の言である。

実に印象深い会話だったので、記録しておく。

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