2017年5月25日

残酷な描写が苦手な人は読むべからず 『殺しすぎた人々 性的サディズムからカルトまで』


本書では、連続殺人と大量殺人を分けてあり、前半が連続殺人鬼、後半が大量殺人を扱っている。この二つはどう違うかというと、連続殺人が年月をかけて殺していくのに対して、大量殺人は一日、時には数十分で何十人という殺人を犯す。ちなみに、「多重殺人」はこの両方をさす。一瞬のインパクトは大量殺人のほうが大きいが、連続殺人では犯人が逮捕されるまでの社会不安が大きい。また、大量殺人に対しては怒りがこみ上げるのに対して、連続殺人鬼では逮捕された後に明かされる不気味で異常な行動に気分が悪くなる。

本書を読んで、アメリカは多重殺人がこんなにも多いのかと驚く。個々のケースはある程度要点が絞られており、殺害の様子が細部まで緻密に描かれるわけではないのだが、それでも思わず顔をしかめたり、小休止して脳と心を冷却させたりしなければいけないところが多々あった。

アメリカ版「新潮45犯罪シリーズ」といったところだが、新潮45に比べると、特に後半の大量殺人に関して、いくぶん社会分析くさくなるのが目障りだった。

「多重殺人は、通常は精神の病気のせいではない。精神病による幻覚妄想で殺人を犯そうとする者もいることは確かだが、遂行能力が低下していて多重殺人には到りにくい」という著者の意見には賛成だ。また、社会や境遇が原因で多重殺人を犯すなんてのは論外だ。

そして、著者はこう語る。
生物学的、心理学的、社会学的、経済学的困難を負っているにしても、多重殺人者はふつう、どう行動するか、どう行動しないかを自分で決定する能力がある。
読んで気持ちの良いものではないので、万人にお勧めできる本ではない。

2017年5月24日

優しいだけでは精神科医は務まらない。しかし、優しさがなければ精神科医として良い仕事はできない。精神科医・中沢正夫のこころあたたまる臨床エッセイ集 『こころの医者のフィールド・ノート』

優しいだけでは精神科医は務まらない。しかし、優しさがなければ精神科医として良い仕事はできない。


著者である精神科医・中沢正夫の眼差しはあたたかく、とても優しい。内容は最初から最後まで、専門家でなくても充分に理解可能なものである。印象深いエピソードもたくさんあった。絶版であるため、愛蔵書として大切に保管しておく。

ところで、わりと古い本なので、精神病患者をさして「キチガイ」という言葉が何度も出てくる。文章全体からあたたかくて優しい人柄がにじみ出てくる中沢医師にあってさえ、病者を「キチガイ」と表現するような時代があったのだと、妙なところで唸ってしまった。

なお、精神病者をさして「キチガイ」という言葉を用いるのには大反対だが、この「キチガイ」という言葉そのものをタブー視するのもイヤで、俺はむしろ好きな言葉でさえある。「キチガイ」としか表現しようのない非精神病者(特に殺人犯)を呼ぶのに、これ以上にしっくりくる言葉もないからだ。

本書にあった特に印象深いエピソードについてのツイッター反応は、@CookDrakeさんがまとめてくださっており、大反響を呼んでいる。ぜひ参考にどうぞ。
お忍びで精神病棟に入院した医学生が見たものは…そして彼の選んだ道は?「怖い」「身につまされる」絶版本のツイートに反応多数

ところで、バッハは半ば忘れられた存在になっていたところ、メンデルスゾーンによって「再発見」されて今くらい知られるようになった、という話がある。同じように、中沢先生の本の多くが絶版になっているが、これを機に再発見・再評価され再版なんてことになれば、俺がこうして紹介した意義は大きいだろう。

Amazonの紙媒体しかない書籍のページでは、右側のほうに、
Kindle化リクエスト
このタイトルのKindle化をご希望の場合、こちらをクリックしてください。 
という部分がある。ぜひクリックして電子書籍化を後押しして欲しい。

2017年5月23日

名人・升田幸三の破天荒な将棋人生 『名人に香車を引いた男 升田幸三自伝』


精神科医としての第一歩を踏み出した病院には、将棋好きの先生が二人いた。二人は同期で、毎日の昼休みや仕事終わりに将棋を指して、勝った負けたと互いに一喜一憂していた。また、研修医時代に師事した精神科の先生もこの二人と同期で、この先生はなんとプロ棋士と対戦して勝ったことがあるという素人猛者であった。

そういう将棋環境(?)だったので、小学校時代にハマった将棋への興味が少しだけよみがえった。ただ、定石を覚えたり、詰め将棋をやったり、棋譜を研究したりするのがまったく性に合っていない。

ところが、数年前にたまたま読んだ『将棋の子』が面白く、続けて読んだ同著者の『聖の青春』がまた輪をかけて面白かったので、「将棋を読む」ことは好きになった。そこから将棋マニアでもあった団鬼六のエッセイを読みあさり、今回は名人・升田幸三の自伝である。

前評判は高かったが、一抹の不安はあった。上記のように、将棋そのものには興味がないので、棋譜がたくさん出てきたり、定石とか戦法とかの説明に多くを割かれたりすると嫌気がさすと思ったのだ。しかしそれは杞憂であった。升田幸三の大風呂敷な語りが妙に心地よく、少しも退屈することなく最後まで読んでしまった。いくらか棋譜は出てくるが、それは完全にスルーした。それでも楽しめるくらい面白い自伝である。

2017年5月22日

Amazonアカウントの乗っ取り被害に遭う……

どうやったのか分からないが、Amazonのアカウントを乗っ取られてしまった……。

気づいたのが朝の5時半、乗っ取りは4時間前の1時半。

メールに「アカウントの修正」というタイトルで、登録アドレス変更の連絡があっていた。その時点でAmazonにはログインできず……。

すぐにAmazonおよびカード会社に連絡した(どちらも24時間の電話対応。職員の皆さま、お疲れさまです)。

Amazonのほうは変更された形跡の確認がとれて、これから調査に入るとのこと。分かり次第、また連絡をくれるそうだ。カード会社のほうは、ひとまず2社とも停止・再発行。不正利用が発覚した場合、連絡すれば請求はされないとのこと。

朝っぱらから冷や汗ものだった。パソコンやスマホ上の他のサイトで登録情報等がハッキングされた形跡はないので、アドレスやパスワードをランダムで入力するのに当たってしまったのかな……?

いずれにしろ、ハッキリするまでソワソワ落ち着かない。

【平成29年5月23日 追記】
5月22日12時半頃にAmazonからメールがあり、上記の件は解決した。メールには「ご利用者様保護の一環の定常的なモニタリング活動を通じて」不正が分かったということが書いてあった。

そこでふと思い出したのだが、AIが「普段の消費動向と違う」と判断したらストップがかかるんだったかな?

たとえばAmazonギフト券なんて買ったことがない人が、ある日、メールアドレスの変更と同時にギフト券を大量発注したら、AIがおかしいと判断する。あるいは普段は日用品しか買わない人が、高額家電をいくつも注文したら、やはり変だと判断する。

そういうことができる時代みたい。

2017年5月19日

治療ハウツー本ではない 『統合失調症治療の再検討』


決して治療のハウツー本ではない。

統合失調症にまつわる歴史的な考察から始まり、精神科治療(薬物、ECTだけでなく、OT、絵画療法、音楽療法、カウンセリング等々)の批判的吟味、精神科病院についての著者の考え、デイケアについて、最後に統合失調症をとりまく諸問題を語る。

「精神科に興味がある」くらいの人が読んでも面白味はないかもしれない。仕事として精神科に関わっている人がこういう本を読んで、著者の考えに賛成したり反対したりしながら、自らの相対的な立ち位置を確認する、そのための本と言える。

本文ではないが、あとがきには中井久夫先生についての逸話がいくつか書かれており、やはり凄い先生なのだなぁと感じた。

どんな感じか参考になるよう、「カウンセリング」についてのページの写真を載せておく。

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